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中華への道!ダイアリー

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2004年11月





11月1日
 
月曜日


四川料理の授業風景
※スーパーの店員じゃありません

1年前の昨日、自動車工場をやめたんだっけ。

(中国への転職を断念したあとに今回の留学を決めたわけで、資金調達のために

出稼ぎをしてました)

あの時は苦しかったな。頑張ってたな〜って、自分でも思う。

中国に来るために金を一生懸命ためた。

あの時の自分は今の自分を想像できたかな。

すごいでしょ!と言いたい。

今の自分があるのはあの時の自分があるからだ。

ありがとうって自分に言いたい気持ち。

 

今日から四川料理の授業が始まった。

午前は遅く起きてボーっとした。

それから2時間ほど中国語の勉強。

本文を丸暗記。

記憶力はまだ衰えてないな。

 

1時から授業開始。

1対1の授業。

6つのガスも独り占め。

俺は幸せなやつだ。

 

まずはじめに四川の調味料、歴史を勉強した。

唐辛子は200年前に四川に伝わってきたと言うことで、

そんなに辛い料理の歴史は深くないそうだ。

4千年前から四川の人は辛いのを食べているのかと思った。

目から鱗。

 

教えてくれるのは初中級クラスの4,5週目を担当した楊老師。

丸々と太っていて、どっからどう見ても調理師といった感じ。

魚香肉絲宮保鶏丁麻婆豆腐を習った。

魚香肉絲と宮保鶏丁は前に習ったことがあるが、

北京式と四川式とでは作り方、味が微妙に違うらしい。

基本的な調理方法は同じだが、

四川式は北京式に比べて辛味や花椒(山椒)のしびれを前面に出している。

また、にんにくのみじん切りを出来上がり寸前に入れ、

にんにくの風味が少し強烈なのが特徴だ。

地方によって味覚が違うからもちろん味も違うんだね。

日本の中華も然り。

同じマーボーでも味が全然違う。

 

2時間みっちりと作り方を見て、

調味料の取り方、左右の手の動かし方、器具類の置き場所など、

しきたりのようなものをまず覚えるように言われた。

 

最後の1時間は教室を移動して実習。

老師が見守る中、マーボーを作ったのだが、

覚えてない。

あせった。

手が震えてカタカタとオタマが鳴った。

 

何とか作り終えたが何を入れるか考えている間に唐辛子が焦げてしまい

色が黒くなった。

塩加減もちょっと多かった。

いや〜、でもいい経験だった。

老師と1対1で勉強できるなんて夢のよう。

 

授業が終わってからオカッパの王君と中央電視台近くの公園にいった。

どういうわけか最近あいつは変わった。

今までは会うたびに「ばかやろー」のくりかえしだったが、

今では「こんにちは、おはよう」などと普通の日本語で話してくる。

きっと先生方に注意されたんだな。

 

公園に行って何枚か写真を撮った。

なぜか今日はスーツ姿だった。

彼は後1週間で卒業だ。

 

おかっぱ君:「今度北京に来た時は連絡をよこすように」

俺:「2008年にまた来るよ」

おかっぱ君:「2008?あ、オリンピックね」

俺:「その頃にはコック長になってるように。食いに行くからさ」

おかっぱ君:「あと4年か。一人前になるには7年はかかるよ」

俺:「お前は努力家だから大丈夫」

勇気付けてやった。

 

なんかいい関係になれたような気がする。

最後に西駅の前でまた写真を取った。

きれいな夜景だった。

俺が帰る時にバスが来るまでで待っててくれた。

ありがとう。


おかっぱ君こと王君 北京西駅前にて 



 






11月2日 火曜日

もう11月か〜。

そういえばあと10日で32だ。

早い。

もっと時間が欲しい。

午前中の授業はなくなったものの、覚えることが多すぎて疲れる。やりがいはあ

るけど。

 

朝おきて、スーパーに買出しに行った。

豆腐一丁1元、ひき肉グラム2,1元、豆板醤2元、米3キロ7,7元。(1元=13円)

昨日習った麻婆豆腐を作った。

味はまずまず。

ゆでた麺にかけて食った。

 

授業では家常海参(干しなまこの煮物)、干焼扁豆(インゲンの炒め物)、砕米

鶏丁(胸肉のこま切りの炒め物)を習った。

先生のは手際も良いし味もうまい。

 

自分も挑戦した。

作っているときに老師がなんか言っていたがガスの音で聞こえなかった。

薄味だったがインゲンはまずまずの出来との事。

胸肉のは少し甘すぎた。

 

4時間集中していると疲れる。

家に帰ってから魚香肉絲、干焼扁豆をつくる。

油入れすぎ、砂糖入れすぎ…。

魚香のトロミ具合が把握できない。

硬くなってしまう。

 






11月3日 水曜日

ガス爆発

朝起きて、外でワンタンと揚げ饅頭を食べ、

公園にある簡易トレーニング機で軽く運動。

後は中国語の勉強。盛華が昼飯を作った。

なす、白菜の炒め物。

うまかった。

 

今日は回鍋肉、塩煎肉、干火(火ヘン)扁牛肉絲を習った。

1時からだが、早めに行って調味料、器具などの準備をした。

助手の張君だけに任しておけない。

準備、掃除も勉強のうち。

 

張君は秦皇島の生まれで、顔は青森系だ。

一重まぶた、あかほっぺでねぶたの絵のモデルになりそうな感じだ。

うちの田舎にもいるような感じで親近感を覚えた。

 

1対1の授業3日目。

中国のホイコーローはキャベツを使わない。

にんにくの葉を使う。

キャベツを使うのは邪道だそうだ。

 

ばら肉を使ったがほとんど脂肉で油っこかったが最高にうまかった。

自分で作ったのは砂糖が多すぎ、豆板醤が少なすぎてバランスが取れた味にはな

らなかった。

 

牛肉の料理の方は、塩、砂糖、味の素を入れるのを忘れて、

最後に和えたような感じになってしまった。

まだまだだ。

覚えられないんだよな。

味加減や、入れる順番が。

なんか秘訣があるはず。

 

帰ってきてまたホイコーローを作った。

作っている途中にガスがなくなりかけたので

ガスボンベをひっくり返したりしてガスをひねり出し、

緑色の炎が出てきたり、突然火柱が上がったりしたが何とか完成。

 

批評しながら食べていたら盛華が突然

「くさい!

の一言。

俺もにおいは感じたが、

くさいのには慣れていたので気にせずにいたら、

やっぱりくさい!と盛華。

「俺じゃないよ」と言いかけた時、

突然、盛華がドアを開けて台所に行った。

その途端、ぶぁ〜っっとガスのにおいが部屋に充満して、さあ大変。

 

窓、ドアを全開にして鍋のふたで扇いでガスを外に出した。

とりあえず飯を食って、ガス商店の人にきてもらい点検しもらう。

ガス管からどぴゅっと黒い液体が出てきた。

ひっくり返したので底にたまっていたものが出てきたのだそうだ。

 

台所は3時間たった今でもくさい。

ガスってすぐに蒸発するんじゃなかったのかな。

自分だけだったら危なく中毒になるか、

ガス爆発するところだった。

危機感が鈍化している。

 

とりあえず、家で作ったホイコーローは肉を炒めすぎて硬くなってしまった。

辛味も足りなかった。

すぐに調味料を取り出せるように台所を改造しなければな。

ここに引っ越してきて1ヶ月が経った。

大姐から林檎をもらう。


回鍋肉 








11月4日 木曜日

朝、ガスのにおいはまだ消えていなかった。

 

火爆腰花(腎臓)、三鮮鍋巴(おこげのトロミがけ)、

ガンビェンシャンユィー(ドジョウに似た魚の煎り炒め)を習った。

おこげはうまかった。

おこげに汁をかけるときの音が食欲をそそり、

海鮮スープが半分しみたおこげがサクサクして激ウマだった。

 

腎臓も切り方が少し面倒だが、臭みがなくておいしい。

老師はしつけ関係に厳しい。

おき場所、鍋の洗い方なども指導を受ける。

細かい指使いまで。

これぞプロと言った感じ。

 

帰ってきたらガスのにおいはほとんど消えていた。

風が吹いてきたおかげで空気の循環がよくなってきた。

木枯らしの季節だな。

 






11月5日 金曜日

時間が欲しい。自由な時間。

午前中、大家が来るので掃除をした。

その後ネットカフェに行ってメール、ニュースチェック。

学校から帰ってきて、習ったものを再度作り、復習、予習。

22時30分。

もう眠いよ。

でも1対1はいい環境だ。

がんばろう。

 






11月6日 土曜日

午前はテスト対策の補習授業に出た。

今月の20日に中級調理師テストを受けることにしたのだ。

同級生に高級を受けるように勧められたが

テスト勉強に明け暮れるよりも実習の方に重点をおきたかったので中級にした。

中級といっても自分にとっては語学力+知識+技術力を要求されるのでかなりの

難度だ。

呂さんは高級試験を受ける。

彼の教科書には線がびっしり。

俺も頑張らないと。

 

昼はいつものようにドカベン君と飯を食い、

午後の授業が始まるまで宿題の彫刻の宿題をしていた。

 

大姐が教室に遊びに来て話をした。

父親の具合が悪いらしい。

元軍人と言うことで無料で病院にかかれるのだが、

無料のためかあまり高度な治療はしてくれないとの事。

 

日本に連れて行くにも家は狭いし、

環境の変化に対応できるかどうかを心配していた。

日本と中国の家に挟まれてかなり疲れているようだった。

 

大姐は大阪の肝っ玉母さんみたいな感じの人なんだけど、

これから商売を始めて家計を切り盛りしていかなくてはならないし、

両国の両親のことは心配だろうし、疲れるのは当たり前だよね。

頑張って欲しい。

 

校長先生が教室に来て、

初めてまともに話した。

話によるとこの学校から数人が日本の中華レストランに働きに行っているみたい

だけど、
同じ中華でも作り方見た目が全くちがくて

「やってらんね〜」

と帰ってきた人もいる様子。

 

日本の中華ってどうなんだろうな。

高級なところに行ったことはないけれど、どうなんだろ。

バーミヤンですら行った事がない。

 

校長に今後のことを聞かれて、

「数年日本のレストランで働いて、修行をしてから店を開きたい」といったら、

「それよりも先に日本の専門学校に通いなさい」だって。

日本の中華を先に学べとのことだった。

 

言っていることはわかったが、俺の考え方は違う。

中国で中華を習い、日本人の味覚を持った俺が作る中華というのは

自分にしか出せない味だと思っている。

もちろんまだまだ修行は足りないが、

そういうものを作り出すのが俺の夢。

 

冷食しか知らないけど、毎日冷食を試食したりしていたので、

舌は少しは肥えてるつもり。

笑われるかもしれないけど、自分の道に自信を持っていこう。

校長に反論できる日が来るように。

校長に分かってもらえる日が来るように。

 

帰ってきてから、大市場で敷布団、テーブルを買ってきた。

合計75元。かなりの出費?

 

夕食は盛華が全部作った。

うまい。腕を上げたなって感じ。

トマトと卵の炒め物、肉と大根の炒め物。

刀工、外観、味、どれをとってもうまかった。

俺は日本で料理を作るときに、

味塩コショウを多用していたのでスプーンで調味料を足す加減がよく分からない。

 

夜、大家さんが家賃の徴収に来た。

うなずくだけにしているからまだ日本人だとばれていないらしい。

 

そういえば、朝、ワンポーと言うオデブ君が笑顔で話しかけてきた。

いつもは俺が話しかけると、こいつはあからさまに嫌な顔をしていたのにな。

昨日焼き増ししてあげた写真の効果かな?


左からワンポー、ドカベン君、呂さん、おかっぱ君 学校前にて 


みんなと仲良くしようとは思っていない。

無理だ。

ただ、彼らは日本人に対して様々な誤解をしているだろうと思うから、

それを少しでも解いていきたいだけだ。

彼らの言っている中国語が聞き取れない分、

自分も相手に対して疑心暗鬼になる時があるが、

信じることも大切だ。

いいやつだと。

 






11月7日 日曜日

午前中は冷菜課。

この先生の作る料理はいつもしょっぱい。

あまりおいしくない。

でも作り方にヒントが隠れているかも。

口に合わないからといって興味をなくすのはもったいないよね。

根気よくやっていこう。

 

午後は彫刻。いつもの派手な先生が来て、

また魚の彫り方を教えてくれた。

やっぱりこの先生が一番うまい。

 

昼は劉君に連れられて学校指定寮の華興旅館へ。

ほとんどの生徒は学校近くの招待所に寝泊りしているのだ。

部屋に入ると、革ジャン兄貴などの同級生が休んでいた。

いきなり駈け付け一杯というかビール一本を頂く。

そのあと一緒に肉まんの店で昼飯を食った。

 

夜、うちの近くの同級生の家で一緒に呑む約束をして旅館を後にした。

正直休みたかったのだが、ノリのいい雰囲気に水をさすことは控えた。

学校が終わった後、いつものメンバーと待ち合わせをして魚釣台まで行った。

(この釣魚台とは西釣魚台。迎賓館のある釣魚台ではありません)

 

革ジャン兄貴、四川人、呂さん、俺の4人でバスに乗って向かった。

でも降りてから
1人いないことに気づいた。

おなかが出始めた、俺と同い年の四川人だ。

携帯に電話をすると、寝ていたとのこと。

折り返し、バスで彼が戻ってきた時はみんなで大爆笑した。

 

盛華も一緒に合流して同級生の家へ。

迷路のような狭い路地をくねくね曲がって、

突き当りが彼の長屋だった。

俺の家と同じレンガ造りの長屋だ。

 

真ん中に狭い中庭があって、

それを囲むように3つの部屋があるけど

四合院のような立派な感じではない。

小屋っていったほうがいいのかな。

イカリヤアパートみたいな雰囲気だった。

 

ここには俺の同級生と、その彼女、長髪の友達、

同い年ぐらいの女の子が住んでいる。

みんな同郷のようだった。

 

小さいテーブルをつなげて火鍋(中国のしゃぶしゃぶ)を囲んでみんなで飲んだ。

具は、白菜、きのこなどの野菜、魚団子、

豚の血豆腐(新鮮な血を凝固させたもので、臭みはなくぷりぷりしている)。

彼女が一生懸命作ってくれた火鍋。

うまかった。

同居人の彼女の友達がかなり可愛かったが、

恥ずかしがって出かけてしまった。

まあ、結構みんな泥酔したからそれでよかったんだけど。

 

何度も乾杯を繰り返し、ゲームが始まった。

数字を順番に言っていって、7のつく数字と7の倍数は皿をたたかなければなら

ないというゲームで、

皿を叩き間違うと、コップのビールを一気しなけらばならないというペナルティーつき。

屁の河童〜みたいな感じで始めたゲームだったんだけど、

ミス連発。

一気に泥酔状態に陥ってしまった。

 

でも、みんなも似たり寄ったりで、大笑いしながら飲んで食って、

楽しい時間を過ごした。

ほとんど聞き取れなかったけど…。

 

きれいなところじゃなかったけど、

裸電球の下で囲む火鍋は最高だった。


南瓜の熱帯魚 老師作
 


 自作 ほとんどニモ








11月8日 月曜日

午前はネットカフェに行ってメールチェック。

管さんから何度もメールが来ていた。

俺のメールが文字化けをしていた様子。

 

家に帰ると盛華が学校の調理服を着て昼飯を作っていた。

 

午後は学校に行ったものの二日酔いのせいで授業中は聞き取れないし、

あまりしゃべれなかった。

でも何とか頑張った。

 

蒸し魚、豆花魚片、魚香茄子を習った。

魚はちょっと苦手だな。

実習では後者二つの料理を作ったが、

ナスは酢を入れすぎて酸っぱくなってしまった。

たれに油を入れてかき混ぜるのも忘れた。

 

おいしい料理を作れるのはいつになることやら。

 

授業が終わった後、おかっぱ君が明日の午前中に一緒に天安門に行こうといって

きた。

彼は先週卒業したんだけど、テストがあるので今週末まで旅館に泊まっているら

しい。

暇なんだろうな。

 

夜は家でもやしの炒め物、豆腐のあんかけを作った。

我ながら本当にまずかった。

おいしいものが作れない。

なぜだ?

 

作っているときに盛華が「料理はその人の性格を表す」と言ってきた。

思わず、「悪かったな〜、性格もまずくて」とムカッと来たが、

俺の作る料理は薄味であっさりだから、性格は優しいといっていた。

な〜んだ。誉めてんのかな?

「おまえの作る料理は油っこいよ。だから性格は…」

と、返したら笑っていた。

俺って本当に性格もまずいかも…。

 

俺の作る料理は味のバランスが取れていない。

多重人格のよう。

日本で自炊してた時はクックドゥ〜とかばかり使ってたからな。

 




11月9日 火曜日


水煮牛肉 ラー油の下に牛肉が隠れている

朝、大きな雷の音。

朝から雨降りだった。

天安門は明日に延期。

 

授業に行きたくないな〜と思い始める。

休みたい。

でも毎日行って良かったと思える料理を学べる。

毎日この繰り返し。

朝は、自分は中華に興味が全くなくなってしまったんじゃないかと思うほど学校

に行きたくない。

 

今日は米粉蒸牛肉、水煮牛肉、干椒魚塊を作った。

どれも特殊な調理方法だ。

味付けはどれもうまいが、草魚の生臭さだけはまだ慣れない。

実習は後者2つの料理だった。

 

塩気の足りなさ、辛味がしっかりと出ていなくてまとまりのない味になったが、

水煮魚は助手のねぶた君に褒められた。

 

先生はおいしいとはいってくれないけど、

自分としては60点の出来。

先生のは汗が出るほど辛かったけど、結構うまかった。

 

帰ってきてスーパーにいったら、今日は試食デーだった。

漬物、水餃子、クッキー、果物…。

混んでるだろうと思いきや、試食コーナーに人だかりはなかった。

みんな無理やり買わされるのは嫌なんだろう。

 

俺は漬物一袋を買って、後は試食をして回った。

手にとって商品を見ていると、後ろからおばさんの店員が

「それは○○。やすいよ。」と声をかけてくる。

うるさいから、違うのを手に取ると、「それはちょっと高いよ」だって。

またさっきのを手に取ると

「そうそう、そっちの方がお得だよ〜、ずっといいよ、特売だしさ」

と押してくる。

 

おせっかいだよな〜と思いつつ、特売の商品をかごに入れた。

日本にこんな店員いたらクビだよな。

でもおもしろい。

 

夜は盛華が、中国の建国から今までの歩みを説明したビデオCDを見せてくれた。

あれから60年。

見ながら盛華が熱心に説明してくれた。

日本人にはない愛国心。


  







11月10日 水曜日


温強君と王君 天安門にて


午前、おかっぱ君と温強君とで天安門へ。

風が強く寒かったけど、写真をたくさん撮った。

ここぞとばかりに「ここで撮ろう」といってくるので20枚以上は撮ったかな。

 

帰りに、ラーメンをご馳走になってる時に2人が20元づつ出してきた。

写真の現像代らしい。

断ったが、2人は聞かなかった。

仕方なく半分受け取った。

「俺の面子をつぶすな」と2人は不満らしかったが、強引に半分だけにした。

俺もあの2人との写真が欲しかったし、

何よりも、20元は彼らにとっては大金だ。

 

午後は授業でばら肉の蒸し物、糖醋魚を習った。

ばら肉は日本のチャーシューに似て、トロッとしてやわらかい。

糖醋魚は魚を丸ごとをさばいて切り目を入れて揚げたものにあんかけをかける。

刀工と汁が決めてだ。

 

夜は青梗菜の炒め物、しいたけとにんにくの芽のカキ油いためを作った。

習った料理を自分なりに創作したものだ。

盛華は何も言わなかったが、ご飯を2膳おかわりしていた。

おいしかったのか、単に腹がへっていたのかは解らない。

ここ最近おいしいものを作ってない。

ごめんな。試験台にしてしまって。

でも勉強に失敗はつきもの。

これからもよろしく。


 








11月11日 木曜日


川味菊花魚 

午前中、久々に1人で自分のパソコンをいじる。

日本の音楽を聴いたりして過ごしたんだけど、

ネットが出来ないのが残念。

電話線がないのだ。

 

授業では高級料理を作った。

といってもアワビやふかひれではなく手のかかる料理。

ボイルして薄切りにしたバラ肉であんこをくるんでもち米と一緒に蒸したものや、

菊の花のように肉を開くようにした魚の揚げ物

鶏肉の四川風味の炒め物。

 

あんこは意外と油っこくなく、甘すぎず、うまかった。

魚は刀工に手間がかかった。これも美味。

 

家に帰ってきてから水煮牛肉を作った。

溶き片栗粉をつけた牛肉をスープで湯通しするのだが、

家庭用のコンロでは火力が足りなくてスープに片栗粉が溶け出してしまい、

トロトロスープになってしまった。

急いでスープだけを作り直し何とか完成。

盛華もなかなかうまいと絶賛していた。

この調子だ。

 

そういえば盛華が、今日11月11日は俺の日だと言っていた。

明日は俺の誕生日だから、前夜祭か何かなのかなと思っていたら、

今日は独身の日だとのこと。

「1」(ひとり)が4つ。

…余計なお世話だよな。









11月12日 金曜日


覚えられない・・・


午前中はテスト勉強をした。

あと8日。

教科書に線を引いた部分を暗記しているのだが、

半分しかはかどっていない。

 

授業では珍珠丸子、すっぽん料理、京醤肉絲を習った。

早めに教室に行って準備をしていたら、

ねぶた君こと張暁泉君がニヤニヤしてビニール袋を持ってきた。

なにやらガサガサ中のものが動いていた。

てっきり外でペットかなんか買って来たのかと思ってたら、

なんと中身はすっぽんだった。

 

小ぶりだけど、頭を出したり引っ込めたり、

手足をばたばたさせたり元気なやつだった。

子供の包茎チンポみたい。


在りし日の包茎君

調理する時、殺すのはねぶた君の役目。

みんなでアミトホ〜(南無阿弥陀仏)と唱えながら、

胸に包丁をグサリ!水の中に入れて血を出させた。

アミトホ〜。

 

味は蛙を硬くしたような感じで噛めば噛むほど味が出てきた。

甲羅も軟らかく煮たのでぷるんぷるん。

結構うまかった。

 

授業が終わった後、ヤン老師と酒を飲みながら、

作り方のアドバイスを受けた。

この方は北京のレストランで働いた後、四川、広東でも仕事をした事のある人だ。

丸々と太った人で、作る料理はいかにもおいしそう。

本当にうまい。

調理理論もしっかりしている。

 

2人で4本のビールをあけて帰ってきた。

帰りに市場で買い物しようとしていたら盛華とばったり会う。

家が停電したらしく、外食でもしようとしてうろついていたようだ。

 

外で炒米線(焼きビーフン)を食べ、ろうそくを買って帰ったら

電気が通っていた。

な〜んだ。

久々にろうそくの明かりで過ごしたかったな。

 

今日は誕生日で32になりました。

すっぽんも食うことが出来たし、よしとしよう。

来年日本に帰って、一年働き、34歳には店を開こう。


珍珠丸子



大蒜焼足魚
 







11月14日 日曜日


大流行の台湾アイドル「S.H.E」
曲は良いけど歌は下手。ダンスも下手。でもまずまずの顔。

午前は冷菜課だった。

この授業でおいしい料理を食ったことがない。

今日は鴨の塩漬け卵巻きと豚耳。

豚耳はコリコリしておいしかった。

でもタレが問題。

醤油、す、にんにく、油だけじゃ足りない。

 

高級班では最近ふかひれやアワビ料理の作り方を習っている。

早くそっちの方を習いたいよ。

ふかひれ食ってみたい…。

 

昨日市場で買った音楽テープが不良品だったので交換しにいって来た。

すると「うちで買ったんじゃないだろ」だと。

「ここで6元で買ったんだ!」と言ったら、

勝ち誇ったような顔をして「うちで売ってるのは4元だ」とぬかしやがった。

「お前が値段を間違えたんだろう!」といっても聞かず、

言い合いをしていたら老板(社長)登場。

相変わらず4元と言い張るおやじ。

こっちも負けずに「客を騙すな!」などと言ったのだが

ちんぷんかんぷんな様子だった。

俺の中国語が聞き取れなかったんだろう。トホホ。

 

結局は同じ内容のテープと換える事ができたんだけど、疲れた。

100円弱なのだが、客としての権利を守りたかった。

 

今は香港や台湾の歌手が相変わらず流行っているらしい。

SHEや、周杰侖など。

結構良い曲だ。

 

たまに街角で日本の歌のカバーが流れている。

「さくら」など。

 

そういえば32なんだな俺。

日本に帰ってすぐにでも開業したい。

うまいもの作ってみんなを喜ばせたい。

うまいものが食べられれば幸せだ。

悩み事のほとんどは吹っ飛ぶ。

満腹になってみんなで呑んで食って笑って…。

田舎のデパートに残ってるデパート食堂的な家族づれで来れるような所がいいな。




 

11月15日 月曜日


麻辣鮮龍蝦

火鍋、麻辣鮮龍蝦を習った。

火鍋とは中国風しゃぶしゃぶといったところで、

違いといえば、しゃぶしゃぶするスープが痺れる辛さで付けダレもちょっと違う。

自分は日本のしゃぶしゃぶよりも火鍋のほうが好きだ。

辛くても止まらない。

やめられない止まらない。

 

10種類ぐらいのスパイスを1時間ぐらいかけてじっくり炒めて

スープの素であるマーラージャンを作った。

こんなに手間がかかっている料理とは初めて知った。

 

スパイスはミキサーにかけたのだが、

ミキサーが突然止まってしまった。

たたくと何とか動き出すのだが

なぜか消してるはずの教室の蛍光灯がちかちかと点灯する怪現象が起きた。

 

このミキサーは発電しているのだろうか。

3人で首をかしげながら、

スパイスの香りにくしゃみをしながら作った。

 

火鍋は経費節約のため(?)、残念ながら肉はなかったが、

白菜と豆腐で試食した。

特製の胡麻ダレがまたうまくて止まらなかった。

ヤン老師、ねぶた君、俺の3人で汗を流しながらの試食。

冬・夏共にもってこいの料理だ。

 

2品目はザリガニ料理。

小ぶりのが15匹ほど流し台の中でうごめいていた。

ザリガニを触るのは何年ぶりだろう。

 

指を挟まれながらも

どんな味なんだろうとワクワクしながら尻尾を引っ張ってワタを抜き、

下ごしらえをした。

油で軽く揚げた後、マーラージャンと塩で味をつけるという料理だった。

予想していた泥臭さはなく、しゃこの味がした。

殻ごと食べると香ばしくてGOOD

ザリガニってうまかったんだ。

 

うちの田舎には以前ザリガニがわんさかいたのだが、

用水路がコンクリートになってからは全滅してしまった。

残念。

食材がこうしてなくなっていく。

 

あの中国に里帰りしている大姐が俺の実習風景を参観していたのだが、

作り終わった後、俺に一言

「調理師の仕事は体力のいる仕事。あんた向いてないんじゃない?」

本当に中国人はストレートにものを言う。

悪気はなく、それがいい関係の証拠なのである。

でも、グサリと来たな〜。

 

確かに体力的な面から見ると俺は不利な状況にある。

大きな中華鍋はやはり重い。

太ろうか。

いや、筋力トレーニングをしないと。

 

晩飯は豚肉を使った火鍋を作った。

白菜、豆腐、油麦菜をたっぷり入れてヘルシーに。

盛華もうまいといってヒーヒー言いながら食った。

 

人差し指のつめを包丁でそいでしまった。

痛い。

絆創膏がはなせない。


 








11月18日 木曜日


とり軟骨の炒め物


香辛白蝦 エビチリの原型のような感じ


香辣蟹 ワタリガニを炒め蒸しする

2日間日記を書いていなかった。

というのも16日に風邪をひき、昨日は飲みに行って帰りが遅くなったから。

久々に風邪をひいた。

 

朝起きてなんか元気が出ないなと思いつつ、

バナナを3本食ってスーパーで買い物をして帰ってきたら

思いっきり風邪の症状に。

ろくにちゃんとした飯を食わなかったからだと思い、

麺をゆでて食ったのだが効果なし。

 

授業中は立ってるだけでもつらくノートをとるので精一杯。

こんな時に限ってカニ料理なんだよな。

でも、体調が悪くてもやっぱり蟹はうまかった。

 

かなり大きめのワタリガニを油で揚げて、

マーラージャンでいためたものだった。

うまみを閉じ込める調理法だ。

殻を割ると中から湯気がプァ〜と出てきて

ぎっしりと詰まったプルンとした肉が出てくる。

さっきまで生きていた蟹だから新鮮そのもの。

口の周りを油だらけにしながらむさぼりついた。

 

実技は最悪。

調味料を入れ忘れたり、

辛味をとった唐辛子を取り出さずに皿に盛り付けてしまったり

(煮干を入れたままの味噌汁のようなもんかな)。

フラフラだったが、何とか帰ってきた。

 

帰ってきてすぐベットへ。

こんな重い風邪は3〜4年ぶりだな。

とりあえず、布団の上に服を全部載せて汗が出るようにして

スポーツドリンクをがぶ飲みして寝た。

腰痛と頭痛、熱、寒気…。

SARSだったりして…と心配した。

 

盛華が晩飯を作った。

いらないといったが少しでも食えと、炒め物2品(白菜、大根)、チャーハン、

クノールのスープを作ってくれた。

病人にはちょっときついメニューだったがおいしかった。

 

次の日の朝、だいぶよくなったのでシャワーを浴びてまた寝る。

授業はとり軟骨の炒め物、腎臓の炒め物、マーラー鶏肉を習った。

鶏軟骨が特にうまかった。

が、きょうは、老師と助手の息が合わなく教室は険悪なムードだった。

ちょっとした事でヤン老師は助手のねぶた君にきれていた。

ねぶた君は秦皇島出身、歳は大体20ぐらい、

あかほっぺをした面白いやつです。

老師にしてみれば気の利かない奴かもしれないけど、良い奴。


この前のワタリガニ。

500グラム30元ぐらいの高い蟹を買ってきて、事務の女の子に

「何でこんな高いの買ってくるのよ
!まったく!」

と文句を言われていたが、

「俺はそういう人間なんだ!」と、ねぶた君は反論していた。

 

彼は小卒でいい仕事が見つからないといっているけど、

助手の中では一番まじめな奴だ。

学歴なんて気にするな〜、いい仕事が見つかるさ。

 

帰り、ロッカー室で着替えをしていたら、

ミズノのトレーナーを着たデブ兄ちゃん登場。

このミズノ君は日本語に興味があるらしく、

「おはよう、こんにちは」などの簡単なものから

「エッチ、セックス、チンポ」などなど、

エロ的な単語もすぐ覚えてしまうから大変。

って、俺が教えたんだけど。

 

彼は「ワタシハイヌデス。アナタハイヌデス」と言ってきたので、

また始まったな位の感じで笑っていたら、今度は大姐登場。

いきなりミズノ君を怒鳴りつけた。

何事だと思い、注意して聞いていたが、

大姐の口から機関銃のように出てくる中国語はあまり聞き取れなかった。

が、犬というのは中国では下等な動物の様子だった。

 

「中国に1人で来て勉強している人に向かって犬とは何だ!」と、

大姐はこれでもかというくらいミズノ君を怒鳴りつける。

彼の表情もだんだんこわばっていき、

最後には日本語でごめんなさいと言ってきた。

俺は別に気にならなかったけど、

大姐にしてみれば自分も一人で日本に嫁いだわけだから俺の状況を心配して

どなりつけたんだと思う。

ありがとう。

 

それにしても中国の女性は強い。

 

下校後、ヤン老師はビールを飲みたいらしく誘ってきた。

老師と大姐、おかっぱ君と俺の4人で飲んだのだが、

その時大姐が「犬」のことを教えてくれた。

戦時中、日本軍に協力した中国人を「犬」と言うのだそう。

英語で言う「chiken」のことか?

そりゃないよミズノ君!

 

飲んでいる時に大姐が入院しているお父さんを心配して家に電話したら

亡くなったとの事。

ここのところ看病が大変で疲れると大姐は言っていた矢先のことだった。

肺気腫らしく、痰が詰まって息が出来なくなっていたらしい。

 

この前、家におじゃまして一緒にご飯を食べた時は元気そうだった。

スタスタと先頭をきってレストランまでの道を歩いていたし、

ダイエット中でろくに飯も食わない孫を叱咤してたし、

別れるときは笑顔で握手をしてくれた。


大姐もさすがに驚いたらしく急いで帰っていった。

50元札を9枚テーブルに置いて。

なんかの間違いじゃないかと思うほど急で、

悲しい出来事だった。

 

その後はさすがに盛り上がれなかったが、

やがてヤン老師のオンステージが始まった。

 

コックの世界での生き残りかた、調理の知識など…。

ヤン老師は黒いVネックセーターをよく着ているが、

聞くところによると、

6年前に当時のコック長が職場のみんなに支給したものなのだそうだ。

モノがいいらしくて袖がぼろぼろになっても着ている。

薄いけれど密なつくりで風を通さないらしく、

息を吹きかけて何度も実演してくれた。

よっぽど気に入ってるんだな。

 

コック長になったらいい物を部下に与えるのがコツなんだそうだ。

100元ものもでもたくさん買えば半額くらいで買えるし、

与える時は200元だといって与える。

 

毎月のボーナスの支給の仕方も面白かった

(中国のボーナスは夏、冬とは決まっていない)

会社が出す総支給額は毎月変わりがないが、

一人一人のボーナスは毎月差をつけるのがコツなのだそうだ。

少なくもらった人が、「何で俺が10元であいつが100元なんだ!」とか、

ボーナス袋が空っぽで文句を言ってきたら、

その月以降しばらくボーナスを与えない。

たとえ少なくても文句を言わず働く部下にはだんだん高くしてやる。

だけど、ずっとまじめな人に対してもたまにボーナスを低くすることで

緊張感を持続させることが出来る…。

などなど、人材が豊富な中国ならではの方法を教えてくれた。

 

でも、こういう上司の下で働きたくないな。

 

あとはコック長に対してのおべっかの使い方。

タバコがなくなる時期を把握して買ってきておく、

話をしている時のライターを置く位置によって

何をいいたいのか分かるようにする

(たとえば、ライターをタバコの上に置いたらタバコの残りが少ないとか)

 

…しかし、ほんとにそんな上司は嫌だな。

 

まあ、日本でもこういう状況はあるけどね。

でも、中国でも何かをもらったら何かで返すのが常識だから

上司を選ぶ目を持つのが大切だな。

タバコ貢ぐかわりに技術をしっかりと伝授してくれる上司だったら

大歓迎だ。

 

こんな話のほかにも調味料同士の相性なども教えてくれた。

砂糖と味の素を大量に一緒に使うと渋みが出るとか、

酒は肉料理のときに特に使う(酒と油が混ざり合って乳化するとうまみが出て、

しかも肉の臭みも消える。酢を少し加えるとさらに臭みが消える
)

卵焼きなどの卵料理には味の素は使わない(生臭みが出る)。

などなど、目からうろこ的なことを教えてもらった。

 

そのあとはなぜか宇宙の話。

これはちょっと長すぎる話だった。

おかっぱ君もうんざり気味。

 

3人で11本のビールを飲み解散。

10時を回っていた。

体調がすぐれなかったので、帰り道、ゲロしてしまった。

 

家に帰ると盛華が心配していた。

誘拐されたかと思って学校や呂さんに電話をしたらしい。

家に着いたのが11時近かったからな。

心配かけてすみません。

 

呂さんが心配して12時ごろに盛華に電話をかけてきた。

ありがとう。

携帯買わんとな。

 

あさってはついに筆記試験の日だ。

理論の勉強、半分しかはかどってないよ。

酒飲んでる場合じゃなかった。

こんなんで大丈夫だろうか。

 

そういえば、タクシーで帰るときにヤン老師が俺のことを

「日本から来た弟子だ」と運ちゃんに言っていた。

「弟子!

弟子になれたんだ!

なんだか嬉しい。

毎日老師が使う包丁を研いだりふきんを洗っていた甲斐があった!


 







11月20日 土曜日 調理師筆記試験の日


テスト会場である我が校 2階から上が小学校になっている


昨日から味覚が変になった。

舌がおかしくなった。

食べるものすべて苦く感じる。

やばい。

 

おとといの夜、大姐に電話をした。

かなり沈んでいた。

死んでしまってからもっと親孝行するんだったと感じると。

学校に通うよりも家にいて看病したり栄養のあるものを食べさせたりしてあげる

んだったと。

おばあちゃんはずっと泣いていて、

一人残して帰るわけにもいかず、当分日本に行く目途が立たないとの事だった。

23日に八宝山で追悼式があるらしい。ここは国の幹部が葬式を挙げるところだ。

 

何を言っていいのか分からなかった。

ただ元気出してと言うので精一杯だった。

自分も親が元気なうちに孝行したい。

 

今日はテストの日だった。

この試験のために、ここ数日授業の復習もせずにテスト勉強だけをしてきた。

テスト範囲の部分に線を引いて全部暗記するという方法をとるしかなく、

とくに食材を覚えるのには困った。

見たことも食ったこともないものを文字だけで覚えるのはつらかった。

 

そして7時前に起きて登校。

こんなに早い時間に外に出たことはなかったから気づかなかったが

朝焼けがとてもきれいだった。

家の前の塔がオレンジ色に染まっていた。

コーヒーを水筒に入れ、レタスサンド(ナンのように焼いた生地に豆板醤ソース

を塗ってレタスをはさんだもの)を屋台で買い、

バス停までの川沿いの道を歩きながら朝食をとり、思った。

「テストなんかどうにでもなれ!」

これが正直な心境だった。

 

7時半過ぎに学校の校門に着いたら、

助手の張生とクラスメイトの李温強がニヤニヤして手を振っていた。

「あいつほんとにテスト受けるんだ」なんて思ってたんじゃないかな。

 

調理師試験の受験料は俺の受ける中級が200元(約2600円)

上級が400元とかなり割高なテストだ。

みんなかなり勉強してきたんだろうなと思いつつ教室へ。

 

まだテスト開始まで時間があったけどいまさら復習してもしょうがないと思い

テキストはロッカーに入れてきてくつろいでいた。

というか頭の中では今まで暗記したことを一生懸命暗誦していた。

…赤ちゃんイセエビは中蝦といい、生後30日、40尾/500g…。

 

試験会場は、学校の上の階にある小学校の教室。

日本と同じようなつくりだ。

さすがに机が小さい。

みんなもテキストや問題集を見たりして最後の追い込みをしていた。

 

この試験に落ちたら、200元がパーになるし、

仕事も見つからないという重要なテストだ。

 

そしていよいよテスト用紙が配られた。

担当は記老師。

すべて選択問題。100問、制限時間2時間。

 

老師の「開始〜!!」の合図でテストが始まった。

みんな問題用紙を開いて、鉛筆でカリカリと答案用紙に答えを書いていた。

俺は一問目からつまずいた。

というのもほとんど中国語のテストと同じだったから。

単語を知らないとどうにもならない。

 

あせってもしょうがないやと思い、

もくもくと問題を解いていたら、老師がなにやら言っていた。

かなり集中していたので老師の言葉は聞き取れなかったのだが、

その瞬間、一斉に生徒が机の中からガサガサと何かを取り出し始めた。

 

な、な、な、なんと、それはテキストだった。

「え?」

何事?

「カンニング?

「いいの?

俺は何が起こり始めたのか理解できず、きょろきょろしてたら、

斜め後ろに座っていた温強がニヤリと笑ってテキストをこっちに開いて見せた。

テキストを見てもいいのはわかったけど、

俺のテキストはロッカーの中なんだよ!

見てもいいんだったら早く言ってくれよ!老師!

こんなの不公平だ!

 

10分後、「隠せ!」の合図で、みんな一斉にテキストを机の中に隠した。

そして、何もなかったかのようにまた問題を解き始めた。

 

それから調理師試験実行委員会幹部と見られる人数人と、

校長が教室に見回りに来た。

その人たちは、机を逆にするようにという指示を出して去っていった。

カンニング防止のためなんだろうが、

政策に対して対策があるという中国のシステムにのっとって、

記老師はテキストをお尻に敷いて隠すようにと指示を出した。

 

それからの教室は試験会場とは思えない光景が広がっていた。

学級崩壊の現場にいるような錯覚を覚えるほど、

収拾がつかない状態になってしまったのだ。

学級崩壊というと、先生が何とか生徒を静まらせるのに躍起になってる姿を

想像するのだけれど、

ちがかった!

 

生徒は教室の中を歩き回り、解答用紙を見せ合いっこしたり、

堂々とカンニング。

老師は注意するどころかその場で採点する始末。

まだ試験終わってないんですけど…()

 

これってテスト?

今までの苦労は何だったんだ?

と思いながらも、俺は温強の解答用紙を参考にして空欄を埋めていった。


無事テストが終わったわけだが、

何が起こったのか分からなくなるくらい信じられないことの連続だった。

友人たちは、これが中国だよといった感じで何事もなかったように帰っていった。

とにかく、筆記試験はこれで終わった…。

 

何はともあれ試験の半分は終わった訳なので

中関村に行って買い物をしてきた。

建設中のビルがたくさんあり、

パソコンや電器などのデパートがすでに何ヶ所も営業していて、

あと数年で秋葉原を追い越すような勢いだ。

 

日本と違うところはメーカーや店ごとに細かくブースが分かれていて

展示会方式で売っているところ。

一般的なデパートもこのようなところが多い。

したがって同じ商品がどこの売り場にもあるという現象がおきており、

土地単価が高い日本では考えられないことが起きている。

値切る習慣がある中国では、

各店ごとに比較できるからこの方が便利なのかもね(?)。

 

昼は海龍(電器デパート)の最上階にあるフードコートでカレー(10元)を食

べた。

薄いカレースープみたいな感じでちょっとがっかりだったが、

久々のカレーはそれでもうまかった。

 

中関村を後にして、今度は西単にいってVCDを買ってきた。

中国の水墨画の漫画と、中山美穂主演ラブレター、

タイタニック(今さら…)の3枚を買ってきたのだが、

ラブレターは最悪だったな〜。

韓国人が知っている有名な日本映画にこのラブレターがあるのだが、

何でこんなの作ったんだろうと思った。

タイタニックはたまに見るといいんだよね。

水墨画はまさに中国チックで、はまってしまうかもしれない。

なんだかんだいって久々の映画に心が潤された。

まずは筆記テストが終わってほっとした。

来週の実技試験で挽回しよう。









11月21日 日曜日

新聞をたまに買って読んでるんだけど、

最近はイラク問題の記事よりも日中関係の記事の方が

よく見られるようになって来た。

今日買った参政消息には

一面トップで数日後に開かれる首脳会議のことが載っていた。

この新聞は、ひとつの問題に対して世界の新聞の切抜きを載せているような感じ

なので偏りがなくていい。

今日のは中日安全問題を大きく取り上げていた。

 

…中国にしてみれば、靖国問題、教科書問題など、全く反省の色を見せない日本が自衛隊の体制を強化することに危機感を感じている。日本にしてみれば、海上交通が中国沿岸に集中しているわけで軍事国家に対抗できるような状態で生命線を守っていかなければならない…。(確か香港の新聞)

 

あとの内容は歴史問題、台湾問題などだったが、

最後には台湾の新聞の記事で締めくくられていた。

 

…日本人は反省していないわけでもないし、中国人の感情を傷つけようとしているわけでもない。複雑な歴史・文化のために誤解が生まれている。歴史を超えた新しい見方で日本と付き合っていく考えも視野に入れるべきではないか…。とのことだった。

 

この論は今のところ中国人には受け入れられないだろう。

ここは中国。

歴史教育がしっかりとなされている。

小さい頃から叩き込まれたことは簡単には曲がらない。

「誤解」では済まされないだろう。

 

台湾問題もいよいよやばくなって来ているようだ。

日本と台湾、アメリカが手を組んで祖国統一を阻んでいるという内容の記事が

目に付く。

中国の多くの人は統一のために戦争もやむをえないと考えている。

最初は台湾を良い同胞と考えていたのかもしれないが、

最近は台湾の大学のレベルの低さを書いた記事や、

経済の落ち込みようを書いたものが多く、

ちょっと台湾への路線が変わってきたような感じがする。

台湾を救え!みたいな感じだろうか。

それとも、だから統一しろっていってるだろ〜!

みたいな感じだろうか。

日中台米が着火点に向かってどんどん熱くなって来ている。

 

頭冷やせよな!

 

釣魚島(尖閣諸島)は半分こ!

海底資源も半分こ!

台湾問題は台湾の意見をちゃんと聞く!

これで解決じゃないか。

 

自分を誇示しようとするから相手も同じようにしてくるんじゃないの?

歴史問題も両政府で真っ向から向かい合って話し合ってみれば?

俺みたいな一市民だって難しい問題も討論して理解し合おうとしてるんだから。

 

もっと仕事せーよ政府!官僚!

事務的な仕事に追われてんじゃねーぞ!

正直、日本人1人で歴史問題を討論するのはつらいよ。

 

今日は日曜日ということでいつものように週末コースの授業に出た。

冷菜の授業ではバンバンジー、レバーのたれかけ、

ばら肉スライスのたれかけを習った。

味はいまいちだったが、調理法の勉強に役立つ。

 

午後はぶどうの食品彫刻を習った。

昨日の午後の授業はサボったので、老師に

「試験終わってから嬉しくて出かけたんだろ!?」

といわれた。

みんな爆笑。

俺も笑った。

 

聞くところによると、中関村で売っているものはニセモノが多いのだそう。

昨日買った60元のカードリーダー。

まだ使ってないけど、不良品じゃなければいいや。

 

隣の教室(上級クラス)ではイセエビ料理を作っていた。

毎週、ふかひれ、アワビなどの高級食材を使って調理をしている。

俺もあともう少しで上級クラスに入る予定だ。

たのしみ〜。

 

俺より一足先に上級クラスに入った呂さんはイセエビを持って記念撮影をしていた。

同じだね。

根っこは日本人も中国人も。

 

今日は家でカレーを作った。

中国メーカーのルーで作ったのだが、うまかった。

濃いまったりとした味。

 

もう11時になるのに盛華はまだ帰ってこない。

 

明日からまた四川料理だ。

味覚がまだおかしい。

辛いものも、油っこいものも食べたくないよ〜。

でもサボらず通おう。










11月22日 月曜日


川味魚腐 ※「豆腐のような」の意味です

週に1回ぐらいネットで日本のニュースを見ているけど、

野球チームが楽天に買収されたり信じられないことが起きてるな。

紀宮様の婚約もある意味信じられない。

 

他には中国の潜水艦問題(はじめて知った)、

イラクの人質など大変なことも起きている。

時間がないので新潟の地震の記事はあまり見れないけど、

食品彫刻の先生の師匠(千葉に働きに行っている)が

帰国してきたそうだ。

地震に慣れていない中国人にしてみるとかなりびびったんだろうな。

 

午後は手羽先のピリ辛炒め、川味魚腐(四川風魚団子)、

泡菜魚頭(酸っぱい漬物と魚の炒め煮)を習った。

風邪をひいて以来、胃の調子が悪いので

油っこいものを習うのはちょっとつらい。

 

川味魚腐はさつま揚げのチリソース炒めのようなもの。

さつま揚げといっても魚をさばくところからつくるので

結構勉強になった。

豆腐のように柔らかく、味,歯ざわり共に

日本のさつま揚げとは全然違うものだった。うまかった〜。

 

あとは泡菜(酸っぱい漬物)のつくり方を習い、

事前に作っておいた泡菜をつかって泡菜魚頭を作った。

今日作った泡菜は2週間後に食べられる。

ラー油とあえて食べると、これがまたやめられないんだ。

そのほか、炒め物やスープに入れてもうまい。

 

最後は豚の胃袋の処理の仕方を習った。

手本は助手のねぶた君の役目だ。

すっぽんを殺すなど、ちょっと汚れるのは彼の役目だ。

まずは塩を振り、こすってぬめりを取る。

吐き気する〜といいながらもしっかりと手本を見せてくれた。

明日はこれを使い料理をつくる。

楽しみ。

ホルモン系は俺の大好物。

 

帰りは、西駅まで老師と一緒に帰ってきた。

この老師の授業もあと一週間で終わりだ。

はやいな〜。

 

帰ってきたら盛華が夕飯を作っていた。

彼は就職活動中で、会社説明会に毎日通っている。

この前、生命保険会社に内定が決まったのだがやめたといっていた。

俺も保険会社はあまり勧めなかった。

 

保険会社がどうのこうのというわけではなくて、

盛華がセールスに向いているとは思えなかったからだ。

 

その会社は外資系で歩合制。

毎朝社歌を歌い、ダンスをするそうだ。

毎日たくさんの人が入社し、やめていく。

セールスに興味がある人は残っていくと思うけど

そうじゃない人にとってはつらいだけだ。

やりたいことを早く見つけられるといいのだが。


 





 

11月23日 火曜日


干鍋茶樹


香辛脆du

干鍋茶樹磨iきのこと燻製肉の油煮のようなもの)、香辛脆du(豚の胃袋のピリ辛炒め)、

吊鍋羊肉(羊の炒め物)を習った。

 

干鍋は油をたっぷり使い水分がなくなるまで油で煮るといった感じ

(揚げるのとはちょっと違う)

それを小さい鉄なべに入れ、ホテルの御膳に出てくるような感じで

固形燃料でぐつぐつ煮る。

油はたっぷりなのだが、不思議と油っこさは感じなかった。

 

豚の胃袋は昨日のうちに洗って、アルカリ性の液につけて柔らかくし、

30分ぐらい煮ておいたのを使った。

下処理をしっかりとしておいたおかげで

ゴムのように硬かった胃袋が、プリプリした肉に変わっていた。

しかも、うまみはそのまんま。

不思議だな〜。

 

羊肉は大根と一緒に煮たナベのようなもの。

小さい鉄ナベをつるして、これもやはり固形燃料でコトコト煮ながら食べる。

 

今日習った料理はすべて日本から来たなべを使ったものだった。

中華の世界でも進化のスピードはすさまじく、

地方料理や西洋料理などの調理方法を用いたりした

創作料理がもてはやされているということだった。

今回習った料理は日本の調理器具を使って、

新しさを表現したものらしい。

 

味はやはりどれも辛かった。

でもうまかった。

また食べ過ぎて胃を壊しそうになるほどだった。

 

出来た料理の写真を撮ってる時に楊老師に

「日本料理は中華にはかなわないだろう」

といわれ閉口してしまったが、うんと言っておいた。

日本にもおいしいものはいっぱいあるよ〜。

ただ、中華のほうが圧倒的に味のバリエーション、料理の種類が多い。

 

和食は中華に比べ、パターンがあまりないけど、

だから日本人は和洋中、韓国料理などを好んで食べる。

中国人はいろんな国内の地方料理を好んで食べる。

中華は大きく分けると北京系、上海系、四川系、広東系の4つに別れるが、

それがまたたくさんの系統に分かれるほどたくさんの流派がある。

 

それぞれ使う材料、調味料から調理方法も違うので

同じ中華でもバリエーションが豊富だ。

また、広東菜のように西洋料理のエッセンスを加えた料理もあるので

「毎日が中華」という現象が成り立っている。

もちろん様々な国のレストランがあるのだが、

値段も高く、一般の人たちが外国料理を食べたり作ったりするのはまれのようだ。

 

今流行っている流派は四川系の湘菜(湖南)。

盛華の卒業祝いの時に行ったレストランも湘菜専門店で

味付けは一般的には辛めだが、

四川料理と呼ばれる成都、重慶のマーラー味(花椒と唐辛子の辛味)に対して

湘菜は香辛味で、さっぱりとした辛味なのが特徴だ。

大抵は、店の中に湖南出身の毛沢東の写真が飾られており、

メニューの中には彼の大好物だった毛氏紅焼肉(ばら肉の煮込み)がある。

 

授業が終わってから作った料理持込みで、老師と学校近くの食堂で飲んだ。

授業中、ビールを使って調理した時は決まってのみに誘ってくる。

見ると飲みたくなるのだろう。

かなりのビール好きだ。

 

今日は1人4本飲んだ。

ちょっと飲みすぎだな〜。

胃や、味覚がおかしくなるのは当たり前のような気もする。

 

老師と今後のことについて話した。

四川料理の授業もあと10日余り。

次は広東菜か麺点を習いたい。

老師は引き続き焼き物を教えてくれる様子。

 

いっぱい学びたい。

技術をこの短い期間で完璧に習得するのは難しいが、

せめて知識が欲しい。





 


  

 

11月24日 水曜日


孜然寸骨 中央は大根で彫った五重塔

@泡辛椒魚頭、A紅油燻魚塊、B孜然寸骨を習った。

すべて辛味が抑えてあって、しかもイケた。

 

@は魚頭の辛みそ煮込み

Aは揚げた魚に中華風のタレをかけ、熱いラー油をかけたもの。

Bスペアリブの中華風焼物。スパイスがきいていてうまかった。

 

隣の部屋のかまどでは広東料理クラスの生徒たちが

アヒルや子豚の丸焼きを作っていた。

うらやまし〜。

俺も早く習いたい。

そして食いたい!

 

来月、調理の大会があるそうだ。

とりあえず、参加することに決めた。

どのような趣旨の大会なのかも分からないし、

何を作るかも決まってないけど、挑戦しよう。

 

まずは、大会よりも先に調理師試験の時に作る料理を練習しないとな。

大会では一位かブービーをねらおう。

中途半端な順位はいらない。

 

あともう少しで12月だ。

日本はクリスマスムードでいっぱいだろうな。

北京ではそんなムードはまだない。

山東や天津にいた頃はクリスマスなんて遠い異国のイベントなんていう

感じだったけど、

さすがに北京ではなんかやってくれるだろう。

 

四川の授業が終わったら何を学ぼう?

麺点が先かな。





 


 

  

11月25日 木曜日


豌豆辣牛肉


午前中、西単の中国銀行に行って両替してきたら、

なんと1万円が800元になっていた。

3カ月前は740元だったから1万円で800円ぐらいの得になる。

 

持ってきたトラベラーズチェックを全部元に変えようかと迷った。

1ドル=103円はまたとない機会かもしれない。

 

800円ぐらい!

と、思ってしまうが、中国では800円がモノを言う。

 

1ヶ月の生活費が2万5千円ぐらいだから、800円は結構でかい。

この3ヶ月、中国で使った金は半年間の授業料も合わせて約25万円。

35万あれば、半年間は暮らせる。

ただ、もちろん節約してる上に盛華と家賃を折半しているわけで

普通はもっとかかるだろう。

 

今日は、豌豆辛牛肉、duo椒牛柳、風味羊肉をならった。

久々に辛い料理から開放された。

でも、もう少し辛くてもいいかなという感じだった。


@
は豌豆と、牛肉の炒め物。

沙茶醤という、中華バーベキューソースがきいていてうまかった。

Aは牛肉とマッシュルームの炒め物。

泡椒、ドウチなどの風味がきいている辛みそ風味。

Bはスパイスをきかせたラムの素揚げみたいなかんじ。

ビールによく合いそうだった。

 

どれも肉を柔らかくする調理法と

ソースの風味を出すのがポイントだ。

 

実習では@とAを作ったが

油が多すぎて水溶き片栗粉のトロミがきかず

見た目が悪くなった。

 

味は合格点をもらったが、

Aに唐辛子を入れるのを忘れてしまい、

ピントがずれた味になってしまった。

 

大姐が学校に来たようだが、あえなかった。

きっと気を落としているだろうと思うが、

老師の話だと、元気な様子だったらしい。

 

家に帰ってきてから、あさっての試験の料理を練習した。

清炒蝦仁を初めて自分で作った。

 

さあ作ろう!と思ったら、肝心のえびがない。

スーパーのレジ台に忘れてきたらしい。

なんと間抜け。

スーパーに戻ると、おばさんがしっかりと預かってくれていた。

500グラム16元もしたえび。

ほっとした。

 

ただでさえ、自分に対して疲れたのに、

えびの殻をむいて、ワタを取る作業は

冷凍むき海老しか使ったことがない俺としてはかなり手間のかかる作業だった。

盛華も手伝ってくれた。

 

そして・・・

出来ばえは40点。

澱粉を加えすぎてえびがボタボタしてしまったのと、

油を加えすぎてしまったのでトロミがきかなかったのだ。

 

でも、さすがにえびはうまかった。

 

明日は軟炸鶏条(鶏肉のフリッター)をつくろう。

 

あともう少しで3ヶ月だ。

もう少し効率的に勉強しよう。

一流の厨師をめざして。

 


 

  

11月26日 金曜日

おかっぱ君が朝の8時ごろ俺のうちに来て一緒に市場へ買い出しに行った。

明日の試験に使う材料の調達である。

 

うちから北へ15分ぐらい歩いたところに馬鹿でかい市場がある。

買えない物はないくらいというような市場だ。

 

まずは肉棟にはいり、豚ヒレを購入。

指で押してみて加水してないか、

加工しやすい形かなどを見ながら慎重に。

鶏肉は、色、におい、弾力性を見て。

えびは色、におい、大きさが一定かなどを見ながら真剣に選んだ。

 

おかっぱ君こと王衛革。

正直言ってはじめは嫌いだったが味のある人間だ。

日本で言うと下町っ子みたいにざっくばらんで本能で生きてる様な人間だが

付き合えば付き合うほど惹かれるような人間性を持っている。

不思議な奴だ。

 

明日は実技試験だ。

何があっても落ち着いて行動することだけは忘れないようにしよう。

 


  

 

11月27日 土曜日 調理師実技試験当日


熱菜実技風景 張り詰めた空気の中で順番待ちをしているギャラリー


調理師実技試験が終わった。

 

朝6時半ごろ家を出ると外はまだ真っ暗だった。

長屋の門を出ると川の向こう岸に大昔の塔があるのだが、

その後ろに大きな満月がかかっていて

塔のシルエットがいにしえの中国を思わせるようなすばらしさだった。

早起きした甲斐があった〜!というほどきれいだった。

 

西駅について、食堂で腹ごしらえをし、学校の門に差し掛かった頃に

買いこんで来た材料を食堂に忘れてきたことに気づいた。

 

ダッシュで戻って取りに行った。

あれがないとテストを受けられない。

中にはおかっぱ君の海老も入っているというのに。

幸い席の横にあったからよかったものの

無くなっていたら終わりだった。

最近忘れ物が多いな。

年のせいでなければいいのだが。

 

学校に行くと、すでにたくさんの生徒が準備に取り掛かっていた。

温強君が、俺の場所(まな板)を確保しておいてくれたので

すぐに冷菜作りに取り掛かることができた。

持つべきものはやっぱり友だな〜。

 

大根、にんじん、赤カブ、3種類のハムを同じ形に揃えてきり、

放射線状に並べて盛らなくてはならない。

昨日の夜のうちに形を揃えて湯通ししておいたので

あとは薄くスライスするのみ。

 

みんな真剣そのもの。

広西出身の同級生(指を包丁で切ったあの)は、

家でスライスしたものをタッパに持ってきて

試験場で皿に盛り付けていた。

賢いというか、何というか・・・。

 

1時間以上かけて冷菜(平盤)が出来上がった。

見回りに来た楊老師からお褒めの言葉を頂く。

我ながら上出来。


自信作の平盤 

次は炒菜だ。

3つの料理を作らなければならない。

課題料理の冬筍里脊絲(初中級クラスの卒業試験でも作って失敗したという因縁の料理)

と自由課題の清炒蝦仁・軟炸鶏条だ。

 

6つのガス台を70〜80人の生徒が使うのでかなりの混み具合だった。

 

因縁の冬筍里脊絲は

昨日イメージトレーニングをした通りに落ち着いて作った。

周りが騒がしくとも、自分の世界の中で調理した。

 

結果は過去の教訓を踏まえて作ったので上出来。

記老師も「ハオ〜!(いいぞ〜)」と大声で褒めてくれた。

 

2つ目は軟炸鶏条。

衣が薄く、しかも油温が低かったため膨らまなかった。

出来上がったときに記老師がやってきて

「これは何という料理だ?」

と聞いてきた。

こんな有名な料理分からないなんて、ご冗談を!と老師の顔を振り返ったら

真顔だった。

まじめに聞いてくるほど、軟炸鶏条とは程遠いものを作ってしまった・・・。

でも、言い訳をさせてもらうと、

衣はともかく、塩加減、肉の柔らかさは上出来だった。

悲しい言い訳だけど。

 

3つ目は清炒蝦仁。

俺の中ではメイン料理だった。

 

さあ、揚げようと言うときに、持参してきた新しいサラダ油がなくなっていることに気づいた。

周りにきいても知らないというばかり。

仕方なく前の人が使った油を使った。

 

網ザルで古い油をこしたので問題ないと思ったのだが、

細かいこげたパン粉が海老にくっついてしまい

斑点模様がついてしまった。

また、炒める時に油が多すぎてトロミがつかなかった。

ショックだった。

 

これが3ヶ月の成果だ。

正直沈んだ。

 

試験が終わったあと、おかっぱ君と温強君と飯を食いに行ったが

のどを通らず。

しかも、温強君は南方の方に仕事を探しに行くということで

もう会えないということだった。

数少ない同い年だったのにな。

 

おかっぱ君は学校が斡旋してくれたホテルでの仕事が来週から始まる様子。

もうあまり顔を合わすことはなくなるだろう。

ん〜、さびしい。

試験の結果とのダブルショックで気持ちが萎んでしまった。

 

帰りにネットカフェで「2047」を見てきた。

キムタクをはじめ、フェイウォンなど有名な俳優陣が出演してたので

期待をしてみたのだが、なんともつまらない映画だった。

最近、日本、韓国、中国などの国の合作映画がよく作られているが

面白かったためしがない。

 

出演する俳優陣は豪華な顔ぶれだけど、それだけに気が入りすぎて

脚本は二の次になっているのでは。

でも、キムタクってオーラを感じさせないところがすごい。

それでも歌に映画に大活躍。恐るべし。

親近感があって、そこそこかっこいいから人気があるのかな。

 

しかし、この映画は2時間の大作ではあったが、

「時間を返せ〜」といいたくなるほどだった。

ついでにネット代も返せ〜(1時間40円)

 

あの水野晴郎のシベリア超特急の方がまだましだった。

この映画はサスペンス物としては最低だが、

見方を変えて喜劇ととらえると最上の作品である。

俺は好きだ。

 

夜、家に帰ると盛華が飯を作っていた。

試験の結果を報告。

必ず受かるだろうから心配するなとのこと。

合格発表は1ヵ月後だ。

 

そういえば昼に大姐と会った。

父親が亡くなって、あとに残された母親の面倒を誰が見るかでもめているようだ。

大姐は今後2年間北京に残って母親の面倒を見ることにしたそうだが

そのあとが問題で、兄嫁が同居を拒んでいる様子。

大姐の旦那さん(日本人)は葬儀に来なかった様子。

母親も沈みがちで、大姐が日本に戻るんだったら自殺するといっているらしい。

 

大姐の日本での開業の夢は少し遠のいてしまったが

何かいい方法があるはず。

おたがいにがんばろう。

 

来月の大会の登録をしてきたが、

その大会の名前がなんと「北京栄養美食大会」。

栄養を考えた料理を考案し、作らなければならない。

どうしよう。

何も浮かんでこない。

栄養って、ビタミン?カロテン?ビフィズス菌?なんだ?

 

とにかく挑戦することに意義がある。

結果はどうでもいい。やってみよう。

 

今日はとにかく忙しい一日だった。

疲労、挫折感を感じたが、試験は自分の水準を知るいい機会だった。


平盤実技試験風景 おかっぱ君





  

 

11月28日 日曜日


老師作 大根とにんじんの孔雀

午前中は冷菜の授業を休み

本屋に直行し栄養の本を読みあさった。

 

自分は来月の大会で三鮮鍋巴をアレンジした料理を作ることにしたのだが、

何か工夫をしないと栄養に偏りが出ると思い

きのこを使うことにした。

 

幸いきのこの種類は豊富にあるし、

中国でも飽食の時代が到来して久しいので、ローカロリーがもてはやされている。

その上きのこには各種栄養素が豊富に含まれているし、

大会には最適な食材だ。

 

栄養というと、きのこと牛乳しか思い浮かばないので

シチューのようなスープを使ってあんかけにしようかな。

でも、カレーの方が好きなのでカレーを使うことにしよう。

「魔膨urry鍋巴」(きのこカレーおこげ)でどうだろう。

おこげはポリフェノールたっぷりの黒米を使って作る。

 

問題はカレーだな。

カレーというよりカレースープにする予定。

何年か前に札幌でカレースープが流行ったようだし、

絶対いける。

海鮮スープをベースに、カレー粉を風味付けに使う。

野菜は煮込んで濾して使ったほうが見た目はいいな。

 

まずあと半月ある。

でも明日までに何を作るか提出しなければならない。

 

昼は西単の地下街できのこカレーを食べた。

レストランの名前が味千だから日系なのかな。

中国で初めてまっとうなカレーを食うことが出来た。

具は100%きのこであっさりだけどコクがある。

大会のメニューを考え付いた時にここできのこカレーにありつけたのは

偶然だった。

 

学校へ向かうとおかっぱ君が門のところにいた。

俺を待っていたらしい。

話によると、公主墳(携帯屋、服の店がたくさんある繁華街)にある

結構大きなホテルで働くらしい。

おめでとう。

すぐ分かる場所だから暇があったら遊びにこいとのこと。

 

月給は400元。(約5000円)

他のところよりも少し安めだけど、

最初はどこもこんなもんだからがんばるといっていた。

 

彼は技術はまだまだだが、

口が達者だから上まで登りつめるだろう。

ホテルに食べに行くことを約束してわかれた。

 

しかし給料安いな〜。

いくら住み込みの食事つきとはいえ、

学校近くの食堂のウエイトレスでも同じく400元だ。

うちの近くの肉まんとかの軽食を売ってる所に求人の紙が貼ってあったが、

そこでも600元だった。

400元というのは多分最低ラインだろう。

いずれにせよ、がんばれよ!王衛革!

 

食品彫刻の授業にいくと、

老師が1人で教室にいた。

日本円を欲しがっていたので1万だけ700元で両替した。

今のレートは800元だけど、

結構外貨の収集をしている人なので安くしてあげた。

 

今日は孔雀を彫った。

老師は1時間もしないうちに大根とにんじんを使って孔雀を彫り上げた。

天才だ。

 

彫刻の授業が終わると日本料理クラスに呼ばれた。

今日は寿司を作っているとのこと。

行ってみると生徒が3人、海苔巻きを作っていた。

のりにご飯をべたべたと押し付けていたので注意したくなったが

老師がいる手前、何も言わないことにした。

 

久々にイカの寿司と納豆をご馳走になったのだが、

うまいのなんの。

ちゃんと寿司の味がした。感激。

ちょっとご飯が硬く握ってあったけど、合格。

 

おいしそうに食べる俺を尻目に生徒が老師に

「何で日本人は生ものなんか食べるんだよ」

と不満げに訴えていた。

「じゃあ、何で中国人はこんなうまいもの食わないんだよ」

と言ってやったが、彼は苦笑いするだけだった。

どうしても生のものは食べられないらしい。

習慣の違いだからしょうがないね。

自分が嫌いなものを学ぶのはつらいだろうにな。

何はともあれ、ごちそうさまでした!

 

また本屋によって帰ったので7時ごろに帰宅したのだが、

5時ごろに管さんがうちに来たらしい。

10分ぐらいして帰ったそうだが、会えなくて残念。

夜に電話したら日本語が少し上達していた。

「タカコ・・・ユウコ・・・」

旅館に泊まってる日本人の女の子と友達になったらしい。

相変わらず頑張ってますね。

 

昨日から家の向かいの川の水が凍り、

マックではクリスマスの飾り付けが始まった。

もうすぐ12月だ〜!年末だ〜!



 


  

 

11月29日 月曜日


清湯

スープの作り方を習った。

毛湯と清湯。

毛湯は鶏、鴨を丸ごとと、とんこつ、トン足、モモ肉をつかう。

湯通ししたあと長時間弱火で煮込んでいくスープで

主に調理用のスープに使う

だし汁である。

 

清湯は白濁色の毛湯に鶏のミンチを加え

6回、沸かしたり、冷ましたりを繰り返して透明なスープにしたもの。

鶏のミンチが、濁りを吸い取ってくれるのだ。

これは、主にスープ料理に使う。

 

毛湯は下ごしらえも含めて18時間、

清湯はさらに2時間かけて透明にするという

かなり手の込んだものだ。

 

その分さすがにうまい。

舌にまとわりつくようなグルタミン酸の味がしなく、

芳醇なうまみが、飲み込んだあと、すっと消えていく。

 

スープを試食した後はだしに使った肉をむさぼり食った。

だしを出し切ったあとの肉でもうまかった。

中華風のタレをつけて3人で無言で食った。

 

肉や骨などの材料代40元。

50リットルの水が、10リットル分のスープに。

ガス代もあわせると原価が50元。

と言うことは、1リットルのスープ原価が5元、

ラーメン1杯分500mlとすると2,5元(約30円)・・・。

人件費などは加算してないけど、

日本で作るといくらになるんだろう。

 

授業が終わったあと、学校に遊びに来たおかっぱ君と老師との3人で飲みにいった。

3人でビール11本。飲みすぎた。

話はほとんど聞き取れず。

勝手に解釈して勝手に話したけど通じてたのかな。

 


  

 

11月30日 火曜日


金銀羹 

豆腐の千切りって聞いたこともなかった。

しかも絹ごし。

 

金銀羹というトロミスープをはじめに習った。

材料は、絹ごし豆腐、黄身を蒸したもの、きくらげの3種類。

それらをすべて千切りにして清湯をベースにしたスープ料理だ。

 

昨日、スープを作るときにさばいた鶏の腹からでてきた卵の赤ちゃんに楊枝で穴を開け、

絞って熱湯に入れたものを使った。

黄色いそうめんのようなものが出来上がって、

それがまた腰があってプリプリしていて初めて食べる食感だった。

 

豆腐の千切りは集中力との戦いだった。

太さ3ミリ、長さ4センチほどの千切りにゆっくりと崩さないように切っていく。

すべてきり終わったら、湯通しをして水を切り、清湯で軽く煮て

味付け、トロミ付け。

最後にごま油をたらして出来上がり。

 

使っている材料は高価なものではないけれど

かなりうまかった。

人件費が安い中国ならではの料理だけど

まさに「ちょっと工夫でこのうまさ!」と言えるようなスープだった。

あまりのうまさに大碗に盛ったスープを3人で全部完食してしまった。

 

2つ目は海鮮酸辛湯を習った。

えび、イカ、なまこ、筍、きくらげを具にしたコショウと黒酢の風味がきいたスープ。

イカのムカデ切り(鹿の子切りしたイカの細切)がきれいに開いたので感激した。

名前はぞっとするけど、本当にこう呼ぶ切り方のようだ。

 

3つ目は推沙望月というなんとも風流な名前のスープ。

「カーテンを開けて月を望む」なんて直訳したら風流もクソもないが、

そんな感じかな。

ウズラをレンゲに割って蒸したものをスープに沈め、

ジュースンというメッシュ状のきのこを浮かべた何とも繊細な料理だった。

味はまあまあだったが、見た目が高級。

ごちそうさまでした。

 

そういえば、日本料理の老師も来月の調理大会に参加するらしい。

俺は何を作ろうかまだ迷っている。

おこげで本当にいいのか。

 

和食をモチーフに中華は作れないだろうか。

海苔巻きをヒントに、寿司飯は使わず中華風の料理を包んで衣を付けて揚げたものはどうか。

中心にえのき茸とか、マヨネーズで味付けした蟹とか千切りした野菜をくるんでもいい。

皿には中華風のソースを敷いて、

その上に揚げた海苔巻きをきれいに切って並べる。

これでどうだろう。

明日、このアイディアを楊老師に絵に描いて見せてみよう。





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