ミュスタイア谷ハイキング
チエルフからサンタ・マリア ランク★☆
目次へ ホームへ
▲前のページへ ▼次のページへ
チエルフ(1693m)〜チャスラス(1691m)〜アルプ・チャンパッチュ(2087m)〜リュ(1920m)〜リュサイ(1746m)〜ヴァルチャーヴァ(1412m)〜サンタ・マリア・ヴァル・ミュスタイア(1375m)
地図:スイス国土地理院地形図1:25,000 STA MARIA (Blatt 1239)
コース概況:
 所要時間はチエルフからアルプ・チャンパッチュが1時間〜1時間半、アルプ・チャンパッチュからリュ約30分、リュからヴァルチャーヴァまで1時間15分〜1時間半、ヴァルチャーヴァからサンタ・マリア20〜30分。

 スグラフィットの施された白壁が美しい民家の立ち並ぶ村々を巡って歩く里山ハイキング。リュから先はすべて郵便バスも通っているので、このコースガイドで説明した中から、適当に良さそうな部分だけ選んで歩いてもいいだろう。

 全行程を通して危険な箇所は特にないが、ヴァルチャーヴァからアルプ・チャンパッチュへの途中は踏み跡が交錯していて、少々ルートがわかりにくいところもある。道に迷う心配はないが、ぬかるみに突っ込むくらいの覚悟は必要。靴はしっかりしたものを用意すること。

 アルプ・チャンパッチュへの登りは、普段あまり歩き慣れていない人には少々きついかもしれない。これが嫌な場合は、チャスラスからリュの間を結ぶ農道(舗装路)を歩くと良いだろう。その場合、靴はスニーカー程度で全く問題ない。舗装路は夏場はかなり暑いと思われるので、水の用意を忘れずに。

 この項の終点、サンタ・マリアから隣村のミュスタイアにある世界遺産、聖ヨハネ修道院まで徒歩1時間の距離。観光のついでにこの区間だけ歩いても充分楽しめるので、本文末尾にコースのあらましを記しておく。

地域図はこちら
コース詳細を写真で見る SimpleViewer by Airtight
 レーティシュ鉄道ツェルネッツ駅からミュスタイア行き郵便バスでオッフェン峠を越え、小さな村・チエルフ Tschierv でバスを降りる。バス停はTschierv, Scoula(学校前)がハイキングコース入口に近いが、Posta(郵便局)でも構わない。

 バスを降りたら峠に向かって少し戻り返すと、右手に枝分かれして牧草地に入っていく小道があるので、そこを入っていく。小道沿いに細長く伸びるチャスラス Chasuras の小集落を通り抜け、15分足らずで林道への分岐に到着する。ここから先、上り坂が嫌な人はそのまま舗装道路を歩き続けてリュ Lue の集落まで行こう。

 ここから先は少々山登り。アルプ・チャンパッチュ Alp Champatsch まで登る人は、舗装道路を捨て、左手に枝別れする林道に入る。アルプ・チャンパッチュまでは標識の「Pass da Costainas / Funtana da S-charl」を目標にすると良い。100mほど歩くと再び分岐点があり、右手から細いハイキングコースが伸びているので、その道を登り始めよう。

 見晴らしのいい、明るい落葉松林の中のダラダラ坂を登ること30分前後、ミュスタイア谷の眺めや小動物たちの可愛らしい姿にもそろそろ飽きてきた頃、道は小さな沢とぶつかる。沢を渡らずに、流れにそってそのまま登りつめて行くと、突然目の前がパーンと開け、半ば草にうずもれたような羊背岩が点在する明るい草原に飛び出す。やがてアルプ・チャンパッチュの小屋が見えだすので、そこまでのんびり歩くと良い。

 アルプ・チャンパッチュの小屋は見晴らしがよく、軽食も取れる。夏場は地元の楽師の演奏も加わったりしてかなり賑わう所。また、ここは国立公園/オッフェン峠方面からの下山者がよく利用するため、情報収集に最適で、小休止には持ってこいの場所だ。

 ここからは次の目的地・リュの集落に向けて歩き出す。リュまでの道はよく整備された林道の緩やかな下り。眺めの良い道だが、割合頻繁に車両が行き来するので注意。30分ほどで集落に到着する。

 リュの村は、スグラフィット(壁に塗った石灰をひっかいて描く紋様)が施された家並みが並び、村の中を放し飼いのニワトリが駆け抜けるようなのどかな小集落。ここから郵便バスでオッフェン峠街道の町・フルデラ Fuldera へ下りることもできるが、この項ではこのまま歩き続けよう。

 舗装道路と牧草地の中の小道を交互に通りながら斜面を下り、リュの隣の集落・リュサイ Luesai を抜ける。ここも可愛らしい村。しばらく舗装路を下り、つづら折りを数回曲がると標識が出てくるので「Valchava / Muestair / Sta. Maria」を目標に、舗装路を外れて森の中の小道に入っていく。

 ところどころ滑りやすい部分もある急な下り道に注意しながら、谷底まで下りる。沢にかかった橋を渡り、沢沿いに歩いて100mほどでもう一度橋を渡り、流れに沿った崖についた小道を歩く。目の前にはオッフェン峠街道沿いの集落、ヴァルチャーヴァ Valchava の家々の屋根が見えている。10分ほどで舗装路に出るので、右に折れて舗装路を歩こう。舗装路を通って街道に出てしまっても良いが、途中から集落の中心に向かって小道が伸びているのでそこに入って行けば良いだろう(途中で製材所?の敷地らしい所に出るが、通り抜け用の標識があった)。

 ヴァルチャーヴァは街道沿いの比較的大きい集落。ホテルやレストランの新しい建物が目につくが、街道から1本入って村落の中を歩くと、築300〜400年の伝統的な造りの家屋もまだまだ健在である。壁のスグラフィットには、その家の建った年や改装年、家にまつわるエピソードなども記されていて、時には新築のピカピカに見える家が1600年代に建った建物だったりと、意外な発見もあって面白い。

 ヴァルチャーヴァからサンタ・マリア Sta. Maria は、さきほどの沢沿いの道をそのまま歩いても行けるが、この項ではモノグサをして街道の歩道を歩いて行く。所要時間15分、観光バスの排気ガスが目にしみる。

 イタリア・ボルミオ方面へ向かうウンブライル峠への分岐点になるサンタ・マリアは、遠目から見ると何ということはない町だが、一旦中に入り込むと、狭い道沿いに重々しい雰囲気の古い家屋が立ち並び、いかにも歴史ある宿場町らしい風情を漂わせている。ここまで来たのなら一見の価値あり。別のページに記事を載せたが、個性的なショップや工房も揃っているので、ぜひともここまで歩いて、町を見物しておきたい。

関連:
小さな町・小さな村「ミュスタイアとサンタ・マリア」
読み物「村の機織り工房」

このコースに関連するロマンシュ語
Tschierv 鹿
val
munt
daint 内の(innerer)、背後の、裏の
起点・チエルフの村を見下ろす。姿の良い正面の山はPiz Daint(2968m)。この名前を日本語に訳せば「裏山」もしくは「オラが村山」と言ったところ。
チャスラスの村落。
アルプ・チャンパッチュへの登り。右手に沢が出てくると、小屋は近い。
アルプ・チャンパッチュからリュへの道。前のページ「シチャールからミュスタイア谷」でもこの道を歩くが、そこで掲載した写真のように、夏の一時期、周囲は一面のお花畑になる。
リュサイの村で見た窓辺の飾り付け。厚さ数十センチもある壁だからこそ、この雰囲気が出る。
ヴァルチャーヴァの村に向け、一気に下降。
ヴァルチャーヴァの村。メインストリートから外れるとこんな家々が建ち並ぶ。
一応の終点・サンタ・マリア。一見あまり魅力がなさそうな町に見えるが、村の中に入っていくと、昔のままの狭い街道に面して古めかしい家屋が軒を並べ、雰囲気が一変する。本ホームページおすすめの注目スポット。

本コースのおまけ:
サンタ・マリアからミュスタイアの修道院へ

 サンタ・マリアとミュスタイアの修道院の間は徒歩1時間で、この区間だけ歩いても充分ハイキング気分を楽しめる。世界遺産観光のついでにでもぜひどうぞ。夏は結構暑いので、必ず水をお忘れなく。

 サンタ・マリアの町の中心部、街道(メインストリート)からミュスタイア方面に向かって左手(北側)に伸びる道に入り、家並みを抜け、川にかけられた橋を渡ったら、そのまま牧草地の中の農道(舗装路)を道なりに歩いていく。途中ところどころに標識があるので、「Muestair」を目印に。

 小高い斜面につけられた道は見晴らし抜群で、氷河が刻んだ明るいU字谷・ミュスタイア谷のプロフィールがくまなく見渡せる。しばらく行くと、行く手にミュスタイアの村と修道院(教会)の尖塔が見えはじめ、牧草の刈り取り前であれば、周囲は一面のフウロソウやキンポウゲの花畑だ。

 逆コースでミュスタイアの修道院を起点に歩く場合、ミュスタイアの町中を通るメインストリートをサンタ・マリア方面に向かってしばらく歩いたら、黄色いハイキング標識で「Sta. Maria」を見つけ、右手に分岐する道を入っていく。

サンタ・マリア〜ミュスタイア間は全行程こんな感じの好展望。下の小さい写真はミュスタイアの村
関連:
山ノボラーのための ロマンシュ語ミニ辞典

記録:2004年7月上旬/2005年10月中旬