スイスの町や村を歩いていると、「こんなに人口の少ない所で、よくここまでやっている!」と感心するような、個性的なお店や工房にしばしば出会う。このページで紹介する、ミュスタイア谷の手織り工房・テッサンダ Tessanda もその中のひとつだ。
テッサンダは旅行ガイドブックでもおなじみの世界遺産、聖ヨハネ・ベネディクト会修道院のご近所、サンタ・マリア村 Sta. Maria Val Mu¨stair にある。場所は村の中心部、街道沿いに建つ典型的なグラウビュンデン式の建物の一角だ。1階(向こう風に言うと地階)はショップ、上が工房とオフィスになっており、重たい木のドアを開けて入っていくと、想像していたよりもずっと力強い織り機の音、そして微かに振動が伝わってくる。
さっそくショップを拝見。広い店内にしつらえられた白木の棚には、皿拭き用の布巾や浴用タオル類などの小物から、ベッドリネンのような大物、更に切り売り用の広幅の反物まで、様々な日用遣いの布製品が並んでいる。これらはもちろん、すべて手作業で織られたものである。
人の手でひとつひとつ打ち込んでいく織物は目がきっちりと詰まり、一見武骨でどっしりと堅そうに見える。ところが、お店の人に促されて手で持ち上げてみると意外にしなやかで、垂れ下げてみると美しいドレーブを生む。光にかざして見れば、機械製品にはない立体感が、布地の表面に微妙な陰影を与えている。
生成りの麻と織り模様が醸し出す微妙な色合い、あるいは鮮やかに染まった羊毛のグラデーション……女性だったらこんなリネン類で家を埋めてみたくなるのは間違いない!
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