9月に入ると朝晩は相当冷え込むものの、天気さえよければ日中の気温は都市部で25℃近く、うっかりするとグリンデルワルトあたりでも20℃くらいまで上がり、まだまだ夏のような陽気が続く。盛夏のスイスは大西洋から湿った空気が入り込み、晴れていてもなんとなく風景がモヤ〜と霞みがちだが、秋になるとそれも解消され、澄み渡った空気のおかげで山々が驚くほどくっきり見える。
ただし秋のスイスは、当たり年は毎日晴れて暖か、逆にハズレの年は何日も雨が続いて寒いというパターンがかなりはっきりしている。筆者の経験では9月に関してはハズレの出現頻度は低いように思えるが、10月は逆にハズレの頻度がかなり高いように思える。また、通常11月になると晴天の日はぐっと減り、灰色の雲と霧に閉ざされる欧州の冬の気配が濃厚になってくる。
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さて、秋、特に9月はスイス旅行には7月に次いで良いシーズンのように思える。まず先程も述べたが気候が穏やかで、もちろん山でのハイキングもまだまだ楽しめる。日照時間はだいぶ短くなって来るが、サマータイムのおかげでまだまだ午後7時過ぎても外は明るく、長い夕べにテラスでビールを1杯、という楽しみも味わえる。
どこも盛夏のような混雑は解消し、例えば夏だったら確実に半日待ちで有名なシャモニ(フランス)のエギーユ・ドゥ・ミディのロープウェーなども、ほとんど待ち時間なしで乗れるようになる。同じ旅なら、時間にきゅうきゅうせず過ごすほうが絶対に楽しい。あのツェルマットですら、秋ならば人にぶつからずに通りを歩くことができる。マッターホルンは拝みたいが人混みはイヤという方は、絶対この時期に来るべき。
また、この時期はおいしい食べ物にも恵まれている。まず果物としてはスイスの国民的果物(?)ツヴェツィク(プルーン)をはじめとするプラム類、ブドウ、イチジク、小振りで甘酸っぱいりんご、梨などなど、そして、それらをふんだんに使ったタルトなどのお菓子。また、何より特筆しておきたいのが栗。「ソーリオからスタンパへ」のページに少し書いたが、少なくとも焼き栗、そして「バーミセリvermicelli」(日本では「モンブラン」というアレ)くらいは試してみよう。バーミセリは店によってかなり味に出来不出来があるので、できればちゃんとしたケーキ屋のカフェなどで頼んだほうがいい。日本のモンブランよりはるかに栗の香りが高く、普段は甘いものにそれほど縁のない男性にも好評だ。
肉料理が好きな方はこの時期、野生の鹿や鳥などの料理がおすすめだろう。正直言って筆者はあまり試したことがないが、少々クセのある肉に、それを打ち消す強いソースがかかっている、というタイプの料理が多いようだ。これが好きな人にはたまらないものだというが、確かにワインにはよく合うようだ。
ついでだがワインといえば、ローヌ谷沿いの地域などワイン産地では、ワイン生産者直営の民宿・ホテルがいくつかある。新酒の時期にはいろいろな企画つきの宿泊も受け付けているので、興味のある方は調べてみるといいだろう。
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10月になるといよいよ秋も深まる。標高の高いところから紅葉(黄葉)がピークを迎え、山は新雪をまとうようになる。この時期のアルプス地方は本当に素晴らしいのひとこと。天気がいい日は9月にひき続きハイキングが楽しめる。ただ、日照時間が短くなってくるので時間配分をよく考え、天候の急変には夏以上に注意を払おう。
年にもよるが、10月に入ると曇りや雨の日が増え始める。この頃からはいったん天候が崩れだすと、しばらく回復が見込めないことが多い。日程に柔軟性を持たせ、スイス以外の近隣諸国の観光と併せることも視野に入れてみるのがよいのではないかと思う。
ところで10〜11月のスイスは、日本と同じように各種文化イベントがめじろ押し。大きな美術館の企画展などもよいが、意外に面白いのが小さなギャラリーやイベントスペースなどで開かれる、地元の製作グループや新進アーチストの展覧会。日本でも最近数年やっと脚光を浴びるようになってきたが、スイスの画家やデザイナー、工芸家には面白いのが沢山いる。しかし日本で紹介されているのはそのうちのごく一部。あなたも御贔屓のアーチストを発掘してみてはいかがだろうか。
(日本で紹介されるスイスのアーチストは圧倒的にベルリン好みの「芸術の蒸留水」タイプが多い。これは実際にベルリンあたりで好評を得た作品が日本人の目に止まり、紹介されるからだと思う。でも、それではつまらない。有識者の目というフィルターで漉される前の原石を拾い集めてみよう!)
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10月の末には平野部でもかなり強く冷え込むようになる。やがて11月、冬を前に不安定な天候の日々が続く。山の観光地ではスキーシーズンを前に休業するホテルや施設が多く、都市部はというとクリスマスの支度にはまだ早い。1年で最も寂しい時期かもしれない。
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