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旅の季節・冬
(12〜2月)

利点--------
・なんと言っても飛行機代が安い。もちろん年末には高騰するが、正月に入るとすぐに値下げする(もっとも、年末が高いと言っても夏のハイシーズンほどではない)

・冬は都市も観光地も非常に華やか。クリスマスの飾り付けはおおむね1月6日のHeilege Drei Koenigeまで続く

・スキー・スノーボードの天国。初心者から上級者までばっちり対応、日本では経験できないような超ロングコースやダイナミックな風景が待っている。雪の中の散策も楽しく、山岳地では雪上ハイキングができる(軽登山靴などしっかりした滑らない靴が必要)

・クリスマス前後のバーゲンは超狙い目

・音楽会シーズン。各コンサートホールの定演プログラムのなんと豪華なこと

・高級チョコレートをメルトダウンの心配なく日本に買って帰れる(すみませんバカなこと書いて)
    

欠点--------
・当然だが外は寒く、日照時間も短い

・これまた当然、夏のようなお花畑ハイキングはできない 
        


参考:服装と気候・冬の巻
   スイスの雑記帳/旅のよもやま「実践!冬の服装」
   スイスの日の出・日の入り

 「冬のスイスは寂しいでしょう」とよく聞かれるが、旅行者にとっては全然そんなことはない。

 12月に入るとチューリヒのバーンホフ通りなどは大がかりな電飾が施され、一気にクリスマス気分が盛り上がる。都市部は夏よりもむしろ華やかな印象を受けるかもしれない。また、雪に覆われていない地域の牧草地や家々の庭は、意外にも鮮やかな緑を保っていて、冬には野も山も一面茶色に枯れ果てる日本から来ると、ちょっと拍子抜けするかもしれない。

 ここで皆さんが最も知りたいはずの、スイスの冬の気候の概観を述べておこう。結論から言うと「思ったほど寒くない」というのが、多くの日本人旅行者が抱く実感だと思う。

 まずチューリヒやベルンなどの平野部。気温は最低-5℃くらい、最高が0℃をちょっと上回る程度と、温度計の数字だけ見ると結構寒そうだが、体感温度としてはそんなに寒く感じない。岩手県盛岡市出身の筆者の知り合いは、スイスより盛岡の方がずっと寒いと言う。シベリア直送の寒風がビービー吹き荒れる日本と違い、スイスの平野部ではほとんど無風の日が多いからそう感じるのではないかと思う。また、室内暖房が効いているので、朝からしっかり暖まった体でスタートできるというのも大きい。

 この時期、スイスでも日本と同じように日照時間がもっとも短くなる。日没時間はだいたい午後17時ころで東京あたりと大差ないが、日本からの旅行者が驚き、かつなじみにくいのが、朝がいつまでも暗いということ。12月から1月にかけてのスイスの日の出は午前8時半くらい。真っ暗な窓の外を眺めながら朝食を取るのはかなり妙な気分だ。もちろん勤め人はそんな中を職場に向けて通勤する。

 日照時間が短いことに加え、平野部においては晴天日が非常に少ないというのは、スイスの冬のマイナス点のひとつだろう。スイス到着時、寒さはそれほど気にならなくても、何日か過ごすうちにこの空模様のせいでだんだん憂鬱になって来る人もいるかもしれない。とにかく来る日も来る日もどんよりとした曇り、霧、時々雨。当然雪も降るが、積もるほど降ることは案外少なく、にわかにバーッと降って止むことが多い。さすがにそんな日は底冷えがする。

 それでは、山岳地帯の気候はどうだろうか?
ここで断言したいがスイスの山岳地帯の冬は最高だ。どんよりと雲がたれ込める低地を抜け出すと、足下にはヨーロッパじゅうを被い尽くしているはずの雲海、そして頭の上は燦々とした陽光。そんなわけでヨーロッパ各地から多くの人々が、太陽を求めてスイスの山岳地帯へ「避寒」にやって来る。もちろん天気が悪化すれば猛吹雪ということもあるが、ことスキー場があるような地域に関しては、日本のスキーエリアよりもおおむね天候は安定しており、晴天日もずっと多い。そのせいか、スイスのスキーヤー/ボーダーは、天気の悪い日はゲレンデに出たがらない。
(ゲレンデが広大すぎるので、天気の悪い日は危険でもある)

 もっとも、山の晴天率が高いと言っても、ひとつ注意しなければいけないことがある。日本より高緯度に位置するスイスは、当然太陽の角度も日本に較べて低く、南を高い山脈に遮られた谷あいの村などは、12月〜1月にかけて、1日じゅうほとんど陽光が差さなくなってしまうような所がある。日本人に圧倒的人気のグリンデルワルトやツェルマットなんかはその典型例だ。せっかく良い天気でも、それではあまり意味がない。もしもお正月休みを利用してスキーに行くときは、その点も考えて、南側が開けた地域に滞在先を選んだほうが気分がいいかもしれない(サン・モリッツやクラン=モンタナなど。スキーリゾートとして高名な場所は、たいてい日当たりがいいのだ)。
太陽の角度が高くなってくる2月に入れば、滞在地の日照をそれほど気にする必要はなくなってくる。

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 さて、クリスマス。ほとんどのガイドブックにはたいてい、クリスマスから正月1日までのヨーロッパには行くものではないと書いてあるが、スイスは大丈夫。特に山のリゾートは最高のシーズンを迎え、文字通り世界中からやってくるスキー客と一緒に楽しく過ごせるだろう。また、都市部も商店に関しては、クリスマス後、大晦日の午前中までは毎日営業する所が圧倒的に多くなった(お疲れさまです!)。

 ただし、「ヨーロッパのクリスマス」に憧れて、知り合いがいるわけでもないのに、あえてその時期を狙ってスイスに行くのはちょっとお勧めできないかも。12月24、25の両日には、日本のようなお祭り騒ぎは期待しない方がいい。クリスマスは基本的に、家族やごく親しい仲の間だけで祝う行事なのだ(センチメンタルになりやすいタイプの人には、クリスマスに1人旅でスイス、というのは絶対にやめたほうがいい)。日本のクリスマス的お祭りイベントは、12月31日の大晦日の晩に体験できる可能性がある。

 ところで、多くの産業活動が休みに入るせいで、外界に排出される熱が減るのだろうか??気のせいか、クリスマスを過ぎると急に真冬の寒さがやってくる(日本の正月みたいに)。またこの数年、大寒波や大嵐などの異常な現象は、なぜかかならず年末に発生する(ような気がする)。

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 鳴り物や花火と共に迎える新年、1月1日。日本の正月と違ってスイスで休みになるのは1日だけ。個人商店などは1月6日のHeilege Drei Koenigeあたりまで休むところもあるが、旅行者にとって特に不便はないだろう。

 さて、1月に入ったら待ってました!冬のセールがなんと言っても見逃せない。スイスに限らずヨーロッパじゅうが大セールのこの時期、特にイタリアあたりなど、わざわざ買い物のためだけに日本からやって来る人も見かける。

 冬のセールも夏同様、ここ数年開始時期がどんどん早まっており、最近はクリスマス前から始まってしまう始末だが、やっぱり買いどきはクリスマスの後。コートなど冬物衣類、靴(特にブーツ類は狙い目)、食器、雑貨……冬のセールは高級宝飾品のようなものから、文字どおりクリスマスの売れ残りの菓子徳用詰め合わせなんていうのまで、本当になんでもある。お好きなものをどうぞ。

 昼は美術館・博物館めぐり、街歩き、ショッピング。それとも山でスキーやスノーボード。夜はコンサートや演劇、バレエ、あるいは華やかな雰囲気の漂うレストランで食事と冬の愉しみは尽きない。

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 2月も1月と同じような感じで推移するが(注:大セールは終わってます)、だんだん日が長くなって1日の気温の変化が大きくなる。平野部では林床の日だまりで気の早い花が咲きはじめたりもする。フェーンが吹き荒れて気温が急上昇し、山で大規模な雪崩が起きるのもこの頃。特にここ数年は2月から3月にかけて、各地で雪崩による災害が頻発しているので、スキーやスノーボードをする際は危険情報の収集を心掛けたい。

 この時期、有名なファスナハトをはじめ、キリスト教以前の信仰に起源を持つような、独特の奇妙な風習をともなう春祭りが各地で繰り広げられる(その多くは、死や闇の象徴である冬を追い払い、生命と光の春を迎える意味を持つ)。スイスの祭りの中で、この春祭りが一番見る価値があるものだろう。これが終わるとスイスにほんとうの春がやってくる。

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 ところで「おいしいもの」のことを書き忘れていた。冬はおいしいものだらけで、逆に特筆すべきことがない。暖かいシチュー、グラタン料理、山羊のチーズがフィリングに入った小さな甘い揚げパンのツィガークラプフェン、クリスマスのシュトーレンや甘いパン。イタリアから来る「モーロ」というブラッドオレンジ、香辛料のきいた熱々のパンチ(アルコールを含んだ甘い飲み物)などなど、などなど……。冬といえども陽光が差すような日には、戸外にも席を出すカフェもあり、日なたぼっこがてら熱い飲み物を楽しむ人たちの姿が見られる。

これでも1月上旬。積雪がない時はこんなふうに一面の緑で、ちょっと不思議。ちなみにこの写真の年(1998年)は暖冬でもなんでもない普通の寒い冬。アルトドルフ付近にて

        

家々に飾られるもみの木の枝。緑の葉は生命の復活のしるし

        

クリスマスを控えたショーウィンドウ

    

ん?

    

ベルンにて。こんなふうに雪が積もることは意外に少ない

      

      

上の小さい写真は1月上旬、シュピーツ〜インターラーケン間。低い雲がたれこめ、トゥーン湖の対岸の山々はまったく見えない。下は同じ日のグリンデルワルト。下界はどんよりと曇っていても、山では青空が広がっている(もっとも、この時期のグリンデルワルトはほぼ終日山の陰で日が射さない)

     

さきほどの写真とやはり同日。高所から見たインターラーケン方面は、こんな感じで雲海の下。スイスに限らずヨーロッパの低地は、冬いっぱい霧とも雲ともつかないものに閉ざされることが多い

     

2月上旬のベルン市内。フェーンが吹くとこんなに山が近くなる。春はもうすぐ

     

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