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スーベニールの殿堂 シュタウファッハ書店
場所:
 ノイエ通り
Neuengasse 。駅を背にして右側を歩いていけば、すぐにわかる。出入り口は他にもあるが、そちらは慣れないと少々わかりにくいかも。
(シュタウファッハ書店ホームページ)

 「書店を見れば、その国の文化水準から政治状況まですべてがわかる」というのを聞いたことがある。 スイスの首都ベルンには大小様々な本屋が目に付くが、そんな中で一番の大型書店・シュタウファッハ Stauffacher をのぞいてみよう。

 この書店はいくつかの建物の外観を壊さないまま、内部をぶち抜いてつなげてある。同じ階でも建物ごとにフロアの高さが違う感じは、ちょうど渋谷の東急ハンズあたりによく似ているが、こちらはより複雑である。
 さて、店全部のフロアガイドをここでしてもしょうがないので、旅行者から見て使いでのある部分をいくつか紹介しよう。

地図、登山書、旅行書売り場:
日本で出ている各種ガイドブックには、チューリヒ・バーンホフ通りのバルト書店 Barth Buchhandlung の地図売り場がよく紹介されているが、観光目抜き通りにあるだけあって、物によっては品切れということも結構ある。そんなときはここに来るといいだろう。また、当たり前ではあるが、ベルナーオーバーラントなどベルン州関係のものは、こちらの方が断然種類豊富。
(バルト書店もコンパクトな割に品ぞろえがよく、筆者の好きな本屋)

子供の本と知育玩具売り場:
かわいいものが好きな人は、ここものぞいてみよう。

スイスの作家とスイスの本コーナー、スイス弁(ベルン弁)の本コーナー:
デュレンマット、フリッシュなど知名度の高い作家から地方の校長先生の回想録、山の写真集に旧スイス航空関連の本のようなものまで、スイスに関する様々な本が置いてある。スイス弁コーナーの本はドイツ語会話教室のみやげにでもして、話のタネにすれば。

絵はがきコーナー:
売り場がゲリラ的にしょっちゅう変わるので、わかりにくい時もある。スイス観光モノからアート系のものまで、ここで一気にまとめ買いする人多し。

英語書籍売り場:
スイスで出版された英語版各種ガイドブックやスイス料理の本などはここで探そう。ペーパーバックの小説など、日本で買えるような本はスイスの方が割高になることが多いので注意。

カフェ・リテレール:
天気のいい日にこのカフェ(屋上テラス)で、周囲の家々の赤い屋根瓦を眺めながら食べる昼食は最高さ!特に一人旅の人は使いやすい雰囲気で、超おすすめ。
   

筆者のおすすめスイス本
(デュレンマットなどクラシックは除外)
英語:
★超おすすめ★
Ticking along with the Swiss (Dianne Dick, Bergli Books AG) 
スイス在住の外国人たちによる、スイスに関するエッセイ集。好評のため数冊の続編があるが、圧倒的に面白いのは最初に出版されたこのタイトル。ちなみにこれの "Swiss A to Z " で爆笑できれば、あなたは完璧なスイスヘビーリピーターだ。

独語(英語・仏語・伊語版があるものも)

GEOGRAPHIE IN DER SCHWEIZ(『スイスの地理』Berner Lehrmittel-und Medienverlag)
10代の子供向けのスイス地理の教科書(副読本)。地理という学科を通して、過去から現在・未来のスイスの姿と、自分自身のくらしを浮き彫りにし、「社会=世界の中のわたくし」をうまく把握させるような構成になっている。豊富に使われたイラスト図版は写真より雄弁で、非常にユニーク。非常に大きくて重いハードカバーの本だが、私もこんな本で勉強したかった。学校の先生、特に中学・高校の地理の先生必見。ドイツ語ができない方でも、おおむね内容が理解できるというところが、これまた考えさせられる。

SAC Clubfuehrer(『スイス山岳会アルプス登攀ガイド』筆者・タイトルは地方別。SAC)
説明不要。登らなくとも持っているだけで嬉しい。

Karten Lesen (『地図を読む』Martin Gurtner、SAC)
これもスイス山岳会の本。タイトル通り地図読解の入門書。スイス国土地理院の地形図作成に関するページには、コンピュータ化以前の地図製版の解説なども出ており、この業界の人間にとっては涙ちょちょ切れもの(1995年版。最近の版には出ていないかも)。

Schweizerdeutsch fuer alle (『みんなのスイス弁』Urs Doerig、Kuemmly+Frey)
スイス弁ミニ辞典にスイス弁文法、州別典型的話法にスイス小話までついた愉快な本。ただし、有名な地図製作会社だったこの本の出版元は、よりによって不動産投資に失敗して2002年に倒産した。この本が今も手に入るかどうかわからない。

★超おすすめ★
Aus Schweizer kuechen (『スイスの台所から』Marianne Kartenbach、Graefe und Unzer Verlag Gmbh)
全スイスの伝統料理を集めたスイス料理大辞典。新年から始まり大みそかで終わる歳時記的な構成になっており、古い銅版画などから集めてきた挿し絵も秀逸。この本のレシピ通りに作ったエンガディーナトルテや梨パンは、スイスで食べたものと100%同じ味がする。余談だが、この本のもともとの出版元は、赤い表紙の地図で知られたHallwagという地図製作会社だった。だが、こちらも1990年代後半に経営拡張の失敗などが原因で倒産している。同業者としてはひじょーーーに情けない。(業界内情報;Kuemmly+FreyとHallwagの地図部門は、ドイツの地図出版会社に買収された)

★超おすすめ★
Anna Goeldin Letzte Hexe (『アンナ・ゲルディン、最後の魔女』Eveline Hasler著、ペーパーバックはdtv)
今度は小説。18世紀末のスイス・グラールスで開かれた、ヨーロッパ最後の魔女裁判。被告の名はアンナ。これまでの社会構造が根底から揺るぎ始める時代、ぶつかり合う価値観の波の表面に押しだされてしまった彼女の一生をたどる。筆者超おすすめ。(東京都立図書館の図書検索によれば、日本語訳あり)

Die Wachsfluegelfrau (『蝋の翼の女』うーん日本語直訳にするとサマにならないタイトル。作者、出版社とも上と同じ)
こちらはおすすめ度中くらい。ドイツ語文化圏初の女性法律家、エミリー・シュピーリ(ヨハンナ・シュピーリの姪)の物語。タイトルが内容の全てを物語っている。

Die Schwarzen Brueder (『黒い兄弟』Lisa Tetzner、Sauerlaender) 
19世紀のスイス・ティチーノ地方の山村の少年が、貧困のどん底に陥った家を助けるため、少年煙突掃除夫としてミラノに売られて行く。そこでは…という物語。少年版『ハイジ』はシビアなのである。厚さに少々ひるむが、青少年向けの本なので物語の展開が早く、文章も平易。とにかく面白いのでドイツ語生かじり系の人でも絶対に最後まで読める。(福武書店から日本語版が出ていたが、現在入手不能)
ところで、この『黒い兄弟』といい、有名な『ウルスリのすず』といい、ドイツ語圏の児童文学は、妙に諦念漂うニッポンの児童文学と違ってなんとも痛快。

★超おすすめ★
Ich, Adeline, Landhebamme (『私・アデリーヌ、郷里の助産婦』Adeline Favre、Robohlt Taschenbuch)
1930年代から出身地のヴァリス州アニヴィエ谷とシエールを中心に助産婦を続けてきたアデリーヌ・ファーヴルさんの自伝。地域で唯一の助産婦だった駆け出しの頃から、不安な第2次世界大戦前後、そして8000人以上の赤ちゃんを取り上げるまでに至った生涯の思い出を綴っている。スイス山村の生活の変遷、様々な人びととの出会い、そしてお産の技術の進歩がやさしい語り口で物語られ、読み物としても面白い。原著はフランス語(Moi, Adeline, accoucheuse/Cabedita社)
ちなみにハイジの黒パンのページで昔のスイスのパンの話をしてくれた女性は、生まれた時このファーヴルさんに取り上げてもらったそうだ。そんなわけでこの本を紹介してもらった。

★超おすすめ★
Adolf (『アドルフに告ぐ(第1巻〜)』Osamu Tezuka、Carlsen)
ドイツ語学習者の方には特におすすめ。言わずと知れた手塚治の名作劇画のドイツ語訳。第2巻以降も順次発売。
シュタウファッハのMangaコーナーの店員さんによれば、(2005年末の段階で)入荷してもすぐになくなる超売れ筋本とのことで、筆者も取り寄せをお願いすることに。
「Mangaファンじゃなくても、これは良い本だよ。おすすめだね」
※この本はドイツやオーストリアで買ったほうがずっと安い。そちらでの購入がおすすめ

持ってて嬉しいスイス山岳会の本。
これは普通の書籍の体裁を取っているが、スイスのガイド類は目的地別に取り外して使う、バインダー式になっているものが多い。
ピラ1枚の紙に地図、コース解説や写真などが盛り込んであるこの方式は、登山に携行するのに便利なのだが、日本ではバインダー式は書店に嫌われ(扱いが面倒なので)なかなか普及しない
登山ガイドの中ではこのように、地図の他に写真や図版を多用してルートを解説している
シュタウファッハ書店の「カフェ・リテレール」。写真ではわかりにくいが、結構広々としている。もちろん室内もあって、雨の日でも大丈夫。
平日のランチタイムはいつもビジネスマンや学生でごった返している
モデルはmk
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