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シルヴァプラナからマロヤへ ランク★
シルヴァプラナ(1815m)〜シルス・バセリア(1799m)〜シルス・マリア(1810m)〜イソーラ(1812m)〜マロヤ(1800m)
地図:スイス国土地理院地形図1:25,000 PIZ BERNINA (Blatt )、1:25,000 VAL BREGAGLIA (Blatt 1276)
コース概況:
 所要時間はシルヴァプラナからシルスが1時間〜1.5時間、シルスからマロヤが1.5〜2時間。

 終始湖を眺めながら歩く楽しいウォーキングコース。前半のシルヴァプラナからシルスの間は車道を避けて少し高いところへ登るが、きつい個所はない。もっともこの区間は、落葉松林が色づく秋の風景は最高だが、夏は少々展望がきく程度で少々単調。全コース歩き通すのが面倒だったら、後半のシルス〜マロヤ間だけにすればいいだろう。

 後半のシルス〜マロヤ間も、上に記したポイントごとの標高を見ればわかるように、大きいアップダウンはない。ただし、道はシルスの集落の中以外はもちろん舗装などされておらず、特にシルスからイソーラの間の道は所々歩きにくい所もある。しっかりした運動靴を履こう。

地域図はこちら
  
 サンモリッツからマロヤ Maloja 行き郵便バスに乗り、シルヴァプラナ Silvaplanaで下車する。バス通りをマロヤ方向に向かって少し歩くと、右手にSilsと書かれた標識がある小道が出てくるので、そこに入っていこう。針葉樹の林の中を、道なりに行くとすぐに道が2つに別れるので、そこは左へ進む。ここから先はしばらく、あまり視界の良くない針葉樹林の中のダラダラ登りになる。

 20〜30分ほど行くと、斜面下手の林がやや開けるようになり、シルヴァプラナ湖とコルヴァッチュの姿が望め、ちょっとホッとするところ。この先すぐに、左に分岐する道がある。ここを入るとシルヴァプラナ湖の口のところで車道に出るが、とりあえずまっすぐに進もう。やがて道はゆっくり下って、シルスの集落の手前で車道に出る。

 マスを釣る人がぽつぽつ散見される川に沿った車道を、集落に向けて10分ほど歩くと、シルス Sils の集落の入り口に着くので、ここを左に曲がる。すぐにある集落は、シルス・バセリア。コースの前半を省略するときはこの辺でバスを降りて歩き出せばよい。

 シルス・バセリアの集落には気楽に過ごせそうなホテルや民宿、コテージが並んでいる。「次に来たときに泊まったら良さそうなところはないかな……」などと、民宿の庭のルピナスの花でも見物しながら目抜き通りを歩くと、一旦家並みは途切れ、広い草地の向こうにシルス湖が広がる。

 道は再び家並みの中に入ると、こちらが有名なリゾート村のシルス・マリア。地味で庶民的な感じのある隣のバセリアに較べると、こちらは派手なカフェや土産物屋が目立ち、それはそれで楽しいものだ。時間があれば、ぜひ寄ってみるといいだろう。ちなみにこのコースは、シルス・マリアの村に入る手前で車道をそれ、右のシルス湖に向かう道に入る。

 シルス湖岸へやってくると、湖に沿って、鬱蒼とした針葉樹林の中を歩くようになる。道は湖の水スレスレまで降りたかと思うと、今度は崖地をよけて上へ登ったりと、やや細かいアップダウンがある。おまけに足元は木の根がゴツゴツ張り出し、少々歩きにくいところもある。

 30分ほどでイソーラ Isola の村に到着。集落の後ろ、山側の崖には、まるで大きな雨樋のような感じで川が流れ下っているのが見えるが、村はこの川の堆積物がシルス湖に押しだしてできた三角州の上に乗っかっている。ここはいかにもグラウビュンデンらしい鄙びた風情の小村で、白く漆喰を塗り固めた家屋が湖の青に映え、写真を撮ったりするにもなかなか良い所だ。小さな食堂もあるので、ちょっとした休憩もできる。

 ひと息入れたら再びマロヤに向けて歩こう。イソーラの集落が尽きると、しばらく湖沿いに歩いた後もう一度小さな三角州を横切って、また道は樹林の中に入る。今度はさっきのような悪路ではない。道は湖からやや遠ざかるが、樹林が途切れがちで、正面の山々もよく見える。イソーラを出て45分〜1時間ほど、ポツポツと家屋が出てくるようになれば、もうそこはマロヤの集落。

 ところで、これまで歩いてきたシルヴァプラナ湖やシルス湖から出る川は東に向かって流れ、イン川(エン川)と合流して、やがてはドナウ川に注ぎ込む。あの水は、遥かかなたのルーマニア/モルドヴァ国境で、黒海へ注ぐのである。すぐ目の前にマロヤ峠の断崖があるが、そちら側には流れ出さないのだ。

 しかしここマロヤの集落で、あなたが今歩いている辺りに降った雨は、もしかしたら目の前のシルス湖=ドナウ川ではなく、西のマロヤ峠を下ってイタリアのポー川になり、アドリア海に出るかもしれない。
目の前の湖の水は東に向かっているのに、なぜ?

 この集落のある平地の地形は、一見ほとんど高低差のないような部分でも、微妙かつ複雑に入り組んでいる。例えば、○○さんの家に降った雨はシルス湖に流れるが、隣の××さんの家に降った雨は、ポー川の支流のひとつである、オルレニャ川に流れ込む、なんて調子なのだ。土にしみ込んで地下水になったものに至っては、もうどちらに行くのかさっぱりわからない。(興味のある方はぜひ1:25,000地形図 VAL BREGAGLIAを見てみよう)。

 話がちょっと脱線してしまった。ポスト Post の標識を探し、バスの発着するマロヤの郵便局へ出よう。

このコースに関連するロマンシュ語
laj
god, guard
laviner なだれ道
plaun, plan 平らに広がった地形全般
baselgia 教会、礼拝堂
muott, cresta
シルヴァプラナの村から登りきったところ。湖の周囲は秋になると一面の落葉松の黄葉に包まれ、素晴らしい眺めになる。

     

シルスの村。

      

マロヤの北、セット峠方面への道から見たシルス湖(下の地図参照)。湖の向こう側に平べったく広がる黄緑色の三角州がイソーラの村。

      

あつまれ!地理マニア
マロヤの北斜面から生まれたイン川はドナウ川に合流し、黒海まで約2800kmの旅をする。
ちなみに北斜面の裏側はライン川水系。

ところで、マロヤの村とマロヤ峠付近の地形はなかなか興味深い。このレベルの地図では表現しきれないような微高地・低地がたくさんあり、はじめは氷河の遺物かと思っていたが、どうもそれだけではなさそうだ。マロヤ峠の肩はじわじわ侵食されているのではなく、数百年単位くらいでオルレニャ谷側に巨大崩落をくり返しているのでは?地図を作っているうちに、不安定そうな構造がよく見えてきた。
(印刷物と違ってwebは色が正確に出ないよ〜。 段彩が見にくいときはモニタの角度を変えてみて下さい)

※その後、イン川南岸をSW-NEの線で貫く構造線の存在を知った。手許の資料では、まさしくここがその末端にあたるようだ
 

関連:
山ノボラーのための ロマンシュ語ミニ辞典