プント・ムラーユ駅 Punt Muragl のそばから出ているケーブルカーに乗って、ムオタス・ムラーユ Muottas Muragl まで行こう。※注
ムオタス・ムラーユは、各方面へのハイキング・トレッキングコースの起点として重宝なポジション。おまけにお手ごろな標高の割に変化に富んだ眺めで人気の高い展望台だ。しばらく屋外の展望台で眺めを楽しんだあと、標識を探して Laj Muragl(レイ・ムラーユ、ムラーユ湖)/Fuorcula V. Champagna/Fuorcula. Muragl という3セットになった地名を確認し、そちらに向かって歩き出そう。
最初は氷河の擦痕がついた羊背岩や、ガレが転々と転がるお花畑の中を行く道を歩いていく。道はなだらかな斜面の脇腹についた、ゆったりとした上り坂で、足場の悪い所はない。大勢の人々が群がって歩くセンガンティーニ・ヒュッテへの道に較べ、こちらは人もポツポツ程度で気分爽快。アルプスを代表する動物のひとつ・警戒心の強いマーモットも、このコースだったらかなり近くで見ることもできるだろう。「ピーフ、ピーフ」という鋭い笛のような鳴き声は、マーモットの警戒信号だ。この声が近かったら、立ち止まってあたりを見回してみよう。
右手遠くに見えていたベルニナの高峰が手前の尾根に隠れて見えなくなり、しばらくすると、進行方向の谷奥にムラーユ氷河の舌状の末端が見えてくる。ここまで来たら最初の目的地・ムラーユ湖は近い。やがて、チャンパーニャ谷への峠 Fuorcula V. Champagna との分岐を示す標識が出てくるので、そのあたりから湖のそばへ下りていこう。
氷河が押し出したモレーンにせき止められたムラーユ湖は、青緑色に透き通った水が輝く山奥の小湖。歩き初めて1時間、大休止にはちょっと早いかもしれないが、少し時間を取って湖の周りを歩いたり、おやつを取ったりするのに非常にいい場所だ。
湖のそばの標識で「Muottas Muragl/Chna.Segantini(セガンティーニ小屋)/Pontresina(ポントレジナ)」方面を確認し、今度は谷底に向かって道を下っていこう。
湖を出てすぐ、左手真下に、ゴロ岩にびっしりと埋め尽くされた氷河の末端が見える。氷河というのは流れ下る途上であちこちから落石を集め、ベルトコンベア状態で下流に向けて運ぶため、末端ではこんな風景になるわけだ。ゴロ岩=モレーンが幾筋もの堤防状のうねりとなって堆積していく様子は、現在の日本の山では見られない面白い光景だ。道は氷河の末端のすぐそばまで降りていくので、こころゆくまで見物しよう。
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