料理レシピ・番外編
日本でも役に立つ!チーズのうんちく
(非おしゃれ系)

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ベルン郊外に住むマダムGは、いつも突然現れては長々と居候を決め込む日本からの客……要するに筆者に手を焼いていた。役立たずな奴ではあるが、お買い物くらいは出来るだろうと送りだせば、ネズミも避けて通るようなひどいチーズを買って来る。これは少々教育せねば……

というわけで、筆者がマダムGに教わったチーズの選び方と、チーズにまつわるウンチクあれこれをメモしてみた。もちろんチーズの種類によってはこのメモ通りとは言えないのだが、大体こんな感じだろう。


・新鮮なチーズの見分け方
・チーズの切り方
・スイスの山羊チーズ
・骨粗しょう症にエメンタールチーズ
・東京でスイスチーズを買う
・スイスでチーズを買う
新鮮なチーズの見分け方
エメンタール、グリエール、パルミジャーノなどの固いチーズ
・より色白でみっちり詰まった感じのものが
・皮のそばの半透明に変色した部分があまり広がってないものが

・アンモニア臭がしないものが
(弱ったチーズは薬用アンモニアと全く同じ刺激臭がする。チーズくさいのとは全く別物)

日本で買う場合は、賞味期限よりも外観や臭いで判断する方が良い。賞味期限前に既に酸化したり、時には腐ってしまっているようなものがあるので注意。高級スーパーやデパートのチーズ売り場でも油断できない。
逆に、賞味期限をかなり過ぎていても上の条件を満たしていれば、たいてい美味しく食べられる。慣れてくれば、冷蔵庫で上手に「熟成」することもできる。
・皮のそばの半透明に変色した部分が中の方まで広がっているもの ×
・干からびた感じのものは ×
・油っぽい透き通った汁がでているものは ×
実は日本で売られている輸入チーズ、特にスイスチーズの多くは、上のダメダメチーズに分類されるものが多い。売られている店の知名度より、自分の目を信用しよう。
柔らかいチーズ、白かびチーズ
・アンモニア臭がしないものが◎
・外観がダレていないものが◎
・皮や切り口がひからびた感じがするものは×
店頭で切り売りしているチーズは基本的に店員さんにおまかせだが、チーズは中心部に近いほど味が良いので、できるだけその部分が大きくなるよう裏工作する
チーズの切り方
ナチュラルチーズはどれも、塊の中心部がいちばん美味しく、栄養もある。これは乳の凝固・熟成過程で中心部に成分が凝集していくからだ。

そんなわけで、チーズをカットするときは美味しい部分が全員に均等に行き渡るよう、必ず塊の中心部から放射状に切り分けるのがお約束。

ホテルの朝食などで、大きなチーズを自分で切り分ける時がある。そのとき、切りやすいからと言って角の部分を切り取ったりするのは重大なマナー違反。

力が弱くて上手に切れないときは、ホテルの人に頼んで切ってもらおう。あなたが女性なら、近くにいるお客の男性に頼んでもOK。

スイスの山羊チーズ(誤記あり・この項末尾を参照……2009年12月)
山羊チーズというのはちょっとクセが強く食べにくいものだが、スイス産山羊チーズのひとつ「ツィガー Ziger」は、初心者向けで試しやすい味だ。カッテージチーズふうにちょっとボソボソっとした外観・風合いの、脂肪分の少ないチーズで、そのまま食べてもいいが、うま味が非常に強いので料理のソースのダシとしても重宝。残念ながら日本で売られているところは見たことがないが、おみやげに変わったものが欲しいときなど良いかもしれない。

ツィガーはたいてい直径4〜5センチくらいの棒状に形作ってあり、銀紙に巻かれたり、ヨーグルトふうのカップ状容器に入れて売られている。チーズ店のものは個性が強すぎることもあるので、ミグロなどのスーパーで購入したほうが無難だろう。プレーン(塩味)のほか、ハーブ入りのものもある。

シンプルだがおいしい食べ方は、トーストしたパンに薄くバターを塗り、その上にツィガーを載せるというもの。このチーズはかなり塩分が強いので、できればバターは無塩のものがいい。慣れないうちは多少山羊っぽい臭いが気になるかもしれないが、ハーブ入りのタイプを選んだり、コショウなどのスパイスをふりかければ大丈夫。
また、すりおろして「粉チーズ」みたいにパスタやサラダに使ってもおいしい。

注:
そっくりな名前の「ツィーガーケーゼ Ziegerkaese」というのもある。こっちはクセが強いソフトタイプの山羊チーズ。カマンベールのような外観をしているので区別はつくが、間違えるとちょっとキツい。

ツィガー入りの揚げパン
ドイツ語圏のスイスでは、寒い時期になるとパン屋で「ツィガークラプフェン Zigerkrapfen」というパンを売りはじめる。スイスのご当地菓子パンのひとつで、シナモンなどで風味づけしたツィガーケーゼが詰まった甘い揚げパンだ。ぜひ一度お試しあれ!



と思ったら、筆者の友人ゆうみ氏@チューリヒから間違いの指摘が……
(2009年12月追記)

「Zigerはヤギのチーズじゃなくて、製法上のカッテージチーズのことです。知ったかぶりすな。Zigerkrapfen はたしかにヤギ乳の Ziger を詰めるけど、Schabiziger (筆者注・上記説明と写真のツィガー)は牛乳」
……確認。
この項で筆者が主に書いたのは、牛乳でできた"Schabiziger"の事だったらしい。

ゆうみ氏によれば、山羊の Ziger はフレッシュな柔らかいカッテージチーズで、たいていはディルの小束を添え、小分けパック入り、あるいはアイスクリームのように容器からすくい出して売られているそうだ。再びゆうみ氏:

「でも私は嫌いです。ヤギのチーズはフレッシュより、熟成タイプの方がずっと食べやすいと思う」

山羊の熟成チーズは筆者も食す機会があった。確かにそれほど山羊臭くなかった……いや、個人的にはかなり美味しいと思ったが、1種類しか試していないので、他の熟成チーズも同様なのか判断のしようがない。そして、筆者がその
山羊チーズを試したとき、スイス人にとっても山羊チーズは食すのに度胸が必要な、チャレンジ!珍味だという事を知った。
食べ物の好みは各々だが、ぜひご参考に。
骨粗しょう症にはエメンタールチーズ
チーズというと、高脂肪で体に良くない食べ物のようなイメージがある。しかし、スイス名産のエメンタールチーズや、イタリアのパルミジャーノ(パルメザン)は脂肪分が少なく、多量のカルシウムが吸収されやすい形で含まれていて、健康にとても良いそうだ。

スイスではしばしば骨粗しょう症対策として、医者が中高年の人たちに、これら低脂肪・高カルシウムなタイプのチーズの摂取をすすめている。毎朝小さめの1切れくらいを食べると良い。日本でも人気のあるパルミジャーノは美味だが塩分がちょっと多いので、どちらかと言えばエメンタールがおすすめ。

同じチーズでもカマンベールのようなタイプのチーズや、プロセスチーズの多く(クリームチーズなど)は脂肪の含有量が非常に多い。こちらは逆に、摂取は控えめにした方がいい。

アッペンツェルなど東スイスに多い薄茶色のウシ。このタイプの牛は脂肪分の多い、濃い乳を出す。その乳から出来るチーズはなかなか濃厚でクリーミー
スイスでチーズを買う
冒頭に出てきたマダムGによれば、スーパーでチーズを買うならミグロ Migros が絶対良いとのこと。ヨーグルトなど他の乳製品もミグロの方が概ね良い。ミグロと並ぶスイスの2大スーパー、コープ Coop のチーズはなんだかカサカサしたものが多く、品質的に劣るそうだ。
スーパーより奮発したいと思ったら、グローブス Globus などのデパート地下食料品売り場のチーズコーナーや、町中のチーズ専門店へどうぞ。

山の中、田舎の村でチーズ製造所を見かけたら立ち寄ってみるのも面白い。試食をさせてくれることも多く、楽しい経験になるだろう。日本では、旅行のお土産として田舎の産直ショップの農産物や海産物が人気だが、スイスでも田舎の産直店で買ったチーズはお土産の定番アイテム。

チーズの名産地・グリュイエールの村をゆくマダムG。
日本でも入手容易なグリュイエールチーズは、そのまま食べてもおいしいが、スイスではグラタン料理などに必要不可欠な存在。スパイスは必ずナツメグ+
コショウを組みあわせて。
チーズフォンデュにもどうぞ レシピはこちら
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