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シュプリューゲン街道 その1 ランク★
スフェールス(標高1430m)〜古城跡(1500m)〜シュプリューゲン(1460m)
地図:スイス国土地理院地形図1:25,000 SPLUEGENPASS (Blatt 1255), ANDEER(1235)
コース概況:
 所要時間の目安は全コース通しで1時間程度。
 特筆するような危険は何もない、散歩用に整備されたコース。本当のことを言うと地図も必要ない。花の咲く牧草地や明るい針葉樹の林、スイスらしいシャレーが点在し、ちょっとした時間潰しにも最適。靴は普通の靴で充分だろう。
地域交通概念マップ
   
 スイスのトゥージスからイタリアのキアヴェンナを結ぶシュプリューゲン街道は、ローマ時代に始まり、中世〜近世を通して、アルプス越えの重要なルートだった。ルートは途中までヒンターライン川沿いを行き、シュプリューゲンでサン・ベルナルディーノ越えの道と分岐し、アルプスを上がっていく。

 現代では1990年代にサン・ベルナルディーノトンネルの完成とともにアウトバーンが開通し、そちらが年間を通して車が通行可能になると、シュプリューゲン街道/峠の重要性は減った。

 この街道の特徴は、前項で紹介したヴィアマーラのような、川に侵食された深い峡谷を行く部分が非常に多いこと。日本で例えれば、黒部峡谷の下ノ廊下のような道が連続する。この項および次項では、この街道の歩きやすい部分のハイキングを紹介する。

 では、前置きが長くなったがコースの紹介に移ろう。トゥージス方面から来るヒンターライン行きローカルバス、あるいはベリンツォーナ行き特急バスで、スフェールス Sufers 下車。

 バス停から一度集落の中に入る。何ヶ所か Via Spluga(シュプリューゲン街道)と書かれた案内標識が立っているので、併記された方向表示の Spluegen をたどって行こう。やがて道は牧草地の中の舗装された一本道になる。スフェールス湖の眺めを楽しみながらしばらく行くと、山の方に登っていく道との分岐に出るが、ここで山の方に行かず、まっすぐ進むと舗装が終わり、歩きやすい白砂の道になる。このへんで一旦牧草地は終わり、明るい針葉樹林の中に入っていく。

 あとは道なりに、どんどんまっすぐ歩いていけばよい。林は所々途切れ、ちょうど上高地で見るような、キラキラ光る白砂の押出しや、子供が水遊びする泉など、左右にいろいろなものを見るだろう。

 30分ほどで再び広い牧草地に出ると、小高い丘の上に半分崩れかかった城跡が見える。Burg(ブルク)という標識のところから入っていくが、道は放牧用の出小屋の敷地を通るようになっている。作業をしている人がいたら、一声かけておこう。

 この古城はご想像通り、その昔、下の街道を行き交う人々を監視する見張り台であった。詳しいことは、城壁の内側にパネルにして展示してある。まあ、とりたててわざわざ見るほどのものか?と聞かれればそれまでだが、特に日の傾いた夕方の雰囲気は悪くない。ベンチにでも座り、ヒンターラインの谷でも眺めわたしてボーッとしよう。

 適当に一息ついたらもとの道に戻り、ふたたび標識にしたがって牧草地の中を歩いていけば、15分ほどでシュプリューゲンの村に到着。この村は伝統的な家並みで知られる雰囲気のいい村で、素通りするのは惜しい。少しくらい時間を設けて見物していくとよいだろう。

 バスの発着するポスト(郵便局)は村の一番下にある。ここからはヒンターライン Hinterrhein 、またはトゥージス Thusis に行くローカルバス、ベリンツォーナ Bellinzona やクール Chur に行く特急バス、イタリアのキアヴェンナ Chiavenna に行くバスが発着する。

古城跡からサン・ベルナルディーノ峠の方向を望む。下を流れるのはヒンターライン

     

古城跡の中に入るとこんなふう。城の由来などがパネルにして展示してある。夕方には、散歩のお年寄りが代わる代わる訪れていた

    

山の斜面にしがみつくように建物が並ぶ、シュプリューゲンの村。一見静かな山村のようだが、村の真下をアウトバーンが通り、トラックの騒音が響き渡るのが玉にキズ