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料理レシピ
Buerli ビューリ…小型の農家パン
Buerliの出来上がり。見た目は武骨なゲンコツのようだが、中身はモチモチしてうまい。自然種を使って焼いたパンは、醤油をつけて焼いた握り飯に似た、独特の良い香りがする。
    
まず自然種を作る

自然種の種類はいろいろあるが、筆者は以前、グラウビュンデンのとあるパン屋で分けてもらったサワー種を保たせて使っていた(……が、2004年夏に死滅)。皆さんも、気に入った味のパン屋があったらタッパー持参でお願いしてみるといいだろう。大抵いくばくかの料金で、時には無料で分けてもらえる。また、筆者は使ったことはないが、自然食品店ではレトルトパックに入った自然酵母(すぐに使えるもの)が売っているらしい。

ちなみにスイスのサワー種は全体に酸味が弱く、パンに焼き込むと全く酸っぱさを感じないものが多い。


自分でゼロからサワー種を作る場合

材料:
皮をむいたタマネギの切れ端 小指の先大(なくても良い。オマジナイのようなもの)
ライ麦粉

1日目 清潔なボールの中でライ麦粉30gと水15gを合わせてよく捏ね、ちいさな団子状に丸めて表面に軽くライ麦粉をまぶし、タマネギの切れ端を差し込んで密閉容器に入れ、涼しい場所で寝かせる。

2日目 団子の匂いを嗅いでみて、微かにすっぱい匂い、あるいはライ麦粉そのままの匂いがするようだったらOK(変なニオイがしたり、団子がネバネバ糸を引くようだったら失敗。廃棄する。)。タマネギは抜いて捨てる。
団子に15gの水を足してゆるめ、そこにライ麦粉30gを足して、昨日よりひとまわり大きな団子に作る。表面に軽くライ麦粉をまぶし、新しいタマネギの切れ端を差し込んで密閉容器に入れる。

3日目 今日も同じ作業の繰り返し。

4日目 今日も同じ作業の繰り返しだが、今日くらいからタマネギは不要。

5日目 今日も同じ作業の繰り返し。すっぱい匂いが強くなり、アルコールのような香りも混じってくる。捏ねてから半日くらいたつと、団子が自然に醗酵して膨らむようになってくる。

6日目 今日も同じ作業の繰り返し。

7日目 この頃には大体出来上がる。団子を密閉容器から出し、ラップでぴっちり包んで冷蔵庫で保存し、あとは7〜10日ごとに同じ作業をすればよい(醗酵して膨らんだ団子がラップからはみ出さないようにガッチリ包む)。店などで手に入れた自然種も同じようにして保たせることができる。

使い方:
必要量をちぎり取り、自然種:水:ライ麦粉=2:1:1の分量で混ぜ合わせて粥状の種を作り、フタのついた容器に入れ、涼しい場所で1晩放置する。盛んに泡立って2倍近くまで量が増えたら使用可能(この作業を「活性化」という)


自然種を作るときの注意:
最高気温が20℃以下になる季節にスタートすること。最適期は11月過ぎてから。夏は絶対にやってはいけない。また、よく熟れて安定した自然種も、夏には悪くなってしまうことがあるので、梅雨時になったらラップとビニールで完全に密閉し、冷凍室に入れてしまうとよい。涼しくなったら解凍し、3〜5日程度毎日面倒を見れば、再び元のように使うことができる。

・ヌカミソ、納豆を扱った手や場所で作業しないこと。特に後者は凄まじいことが起こる……

・タマネギのかわりに洗わないリンゴの皮や干しぶどうを一粒入れる人もいる。まあ、これらの「オナジナイ」はなくても良い。

・自然種はスタート時の条件によって味や香りが随分変わるので、気に入らなかったらやり直してみよう。

     
パン本体を作る

まず、あらかじめ前種(水っぽいドロドロのパン種)を作っておき、後に本生地の材料と合わせて生地をつくる。この水っぽい前種が、スイスパン独特のゴムぞうりのような噛みごたえを作るらしい(ハイジの黒パン参照)。

材料(小型のパン12個分):
前種1(前日の晩に仕込んでおくとよい):
ライ麦粉 30〜50g
強力粉 50g
ドライイースト ひとつまみ
塩 ひとつまみ
40℃のぬるま湯 80〜100cc(上記のライ麦粉と小麦粉の総量と同重量にする)
これらの材料を全部、材料の3倍以上の容積のある容器(ナベが便利)に入れ、木べらで5分程度よく混ぜ、ゆるい種を作る。ラップかフタで密閉し、涼しい場所で8時間程度寝かせておくと、翌日には醗酵して2倍以上に増えている。
(前種は放っておくと醗酵が進みすぎるので、すぐに使わないときは密閉して冷蔵庫へ。3日くらいは保つ)

前種2(これも前種1と同時に仕込む):
自然種を50gくらいちぎり取り、水25cc、ライ麦粉25gと一緒に混ぜ合わせて粥状にし、フタをして前種1と同じように醗酵・活性化させる

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本生地
小麦粉 350g(30g程度の粗びき粉を混ぜてもいい)
ドライイースト スプーン2/3杯
塩 7〜8g程度
40℃のぬるま湯 180cc
その他、くっつき止めのサラダ油

1. 大きめのボールに本生地用の小麦粉とドライイーストを入れ、適当に混ぜ合わせる。

2. ぬるま湯に塩をよく溶かし、2.のボールに入れて粉と軽くなじませたら、そこに2種類の前種も入れ、力を込めてよく混ぜ合わせる。通常のパンより水分の多い柔らかい生地で、最初のうちはかなりベタ付くが、しばらくすると次第にまとまってくるので、ボールから取りだして、台の上で生地がスベスベした感じになるまでよく捏ねる(だいたい7〜10分くらい)。

3. ボールにくっつき止めのサラダ油を薄く塗り、生地を適当に丸めて入れる。固く絞った濡れ布巾かラップでフタをし、暖かい場所で60〜120分ほど寝かせておくと、生地が2倍強の大きさに膨らむ(寝かせ時間は気温によって変わる。いつも筆者はボールに黒い布をかけ、室内の日なたに置いておく)。生地が膨らんだら、両手に小麦粉をたっぷりはたいて、ボールの中で生地を軽く4〜5回捏ねてガス抜きをする。再び適当に丸めて先程と同じようにフタをし、暖かい場所で30分ほど寝かせると、今度はさっきよりやや小さめに膨らむ。

4. オーブンを210℃で加熱しておく。

5. 生地を12等分して丸め、油を敷いた天板に並べて濡れ布巾をかけ、10分ほど2次醗酵する。それからオーブンに入れて18〜20分焼き、出来上がり。


コツ:
・まず大前提として、コシの強い生地になる良い小麦粉を使うこと。スーパーマーケットで普通に売られている大手製粉会社の「カメリア」(強力粉の一種)は不向き。全く違う物体が出来上がってしまう。

・前種1の量に若干幅を持たせてあるが、粗びきの粉を多く使用するときは少なめに、細かく挽いた粉を使う場合は多めに作って使ったほうがいい。

・寒い時期だったら、前種を2種類作らずに、全部の材料を一緒くたに混ぜ合わせてしまってもOK。その場合は自然種がダマにならないように、先に少量の水でよく溶かしておくのがコツ。ただしこの方法で焼いたパンは味や香りが若干落ちる
(気温が高い時期にはパンが非常に酸っぱくなってしまうので、この方法はすすめられない)

・夏は2次醗酵は不要。菓子パンのような物は別だが、スイスの素朴なパンは普通、仕上げの2次発酵の時間が非常に短いか、あるいは全く2次発酵をしない。生地の性質上、これが味と食感に一番大きく影響するので注意。(2次発酵が長いと形はきれいになるが、中身が硬質なスポンジ状になってしまい、特に2日目以降の食味が非常に落ちる。日本の高級パン店で稀にスイスパンを見かけるが、いずれも発酵時間が長すぎ、まずい!)

・自然種を使わなくても、なんとなく似たような感じのパンはできる。その場合は前種を、ライ麦粉100g+強力粉50g+水150cc+塩とドライイーストひとつまみ……で作る。

     
まったくのパン初心者の方へ
パン作りの参考書として、島津睦子さん著『手作りパン工房』(グラフ社)が筆者のおすすめ。アマチュア向けの本には珍しく、ドイツ系パンのレシピが中心になっている。写真入りでとてもわかりやすい。
ちなみにその本の「ビューリーブロット」「スイスのちぎりパン」というのが、この項で紹介したBuerliに相当する。ただ、本のレシピでは2次醗酵の時間が長すぎる(くどいようだが、この点は本当に要注意)。
    
ついでの余計なお世話
パンの味は使う小麦粉の質によって完全に左右される。
数年前、筆者がはじめて専門店で買った上質の小麦粉を使った時には、それまでの努力がアホらしく感じられるくらい、あっけなく美味しいパンが焼けた。しかも、その粉は拍子抜けするほど安価だった(これは店によりけりだろうけど)。皆さんもあれこれ悩まず、いい小麦粉を使おう!
ちなみに筆者は、JR千葉駅から徒歩3分、弁天町にある「フードカルチャー おおくら」という製菓材料店でパンの材料を購入している。別の場所に大きな製粉所も所有している店で、扱う粉の種類の多さにちょっととまどうが、親切な店主のおじさんがいろいろ教えてくれる上に、和洋さまざまな製菓レシピのプリントが貰えるのもうれしい。
とにかく便利な場所にあるので、千葉県在住の方はG0!
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