冬も相変わらずのユングフラウヨッホへの観光客、そしてスキーヤーで賑わうクライネ・シャイデック Kleine Scheidegg 駅。駅舎の裏手、ユングフラウ三山に対面する側に回り込むと、ピッツァなどを売る屋台や屋外テラスのカフェがある。そこで周囲を見回すと、スキーヤー向け標識と一緒に、ウェンゲン Wengen へのスノーハイクコースを示す案内板があるので(歩行者のイラストマークか、あるいは"Fussweg"と書いてある)、それに従って、さっそく歩き出そう。隣接するスキーゲレンデに間違って入り込まないように。
さすがに夏ほどではないが、それでもやっぱりハイカーや橇遊びの家族連れで賑わうハイキングコースは、一部を除いて夏のハイキングコースとほぼ同じルートになる。夏は一面の牧草地になるこのあたり、冬は遮るものが何一つない雪原で、すぐ背後のアイガー北壁をはじめ、周囲の山々が大迫力で迫ってくる。道はなだらかで幅もあり、割合気楽に歩ける。素晴らしい展望を楽しんだり、直下を並走するスキーゲレンデのスキーヤーでも冷やかしながら、足慣らしのためにゆっくり下っていこう。
歩き始めて1時間足らずで、ウェンゲルンアルプ Wengernalp 駅に到着。レストランがあるので、暖かいものを飲んで一息いれたり、お手洗いを借りることができる。ここのそばで、ハイキングコースとスキーゲレンデが交差するポイントがあるが、比較的急坂になっている上、スキーで堅く踏み固められていることが多いため、短距離とはいえちょっと用心が必要だ。
ウェンゲルンアルプを過ぎると周囲にだんだん立ち木が増えてくる。立体交差になったスキー滑降コース(ここでしばしばワールドカップ級の大会が開かれる)を横切るあたりで、道が大きく右にカーブするとともに、眼下に目的地・ウェンゲンの村や、ラウターブルンネンのあるリュチーネ谷〜インターラーケン方面も一望できるようになってくる。深々と氷河にえぐられたリュチーネ谷の岩壁は、雪や氷からの反射光を受けて夏とは全く違った色合いを見せ、大変美しい。また、周囲には次第に、葉を落とした灌木の茂みや、綿帽子のように雪をかぶった針葉樹の疎林が目立つようになってくる。
しばらく行くと、道はアルメンド Allmend の駅近くで登山鉄道の線路を横切る。アプト式特有の歯形のラックレールが面白い。ここは鉄道ファンにとって格好の撮影ポイントになるらしく、筆者が訪れたときは数人が三脚を立てて列車を待っていたが、線路とコースの間を遮るものが何一つないため、特に子供が一緒の時は、近づきすぎないように注意を払おう。
線路を横切ると、すぐにスキーリフトの下を潜る(リフトから降りてゲレンデに出るスキーヤーとぶつからないように)。あとは真下のウェンゲンの村まで一気に下り……と言いたいところだが、実はここから先が意外に長い。その上、これまで大体なだらかな下りだった道は次第に傾斜がきつくなり、雪の詰まった段差なども所々に現れて、足下が不安定になってくる。また、ウェンゲンの村から散歩でこのあたりまで往復する人がかなりいるせいか、ガチガチに道が踏み固められ、滑りやすい箇所も増えてくる。転んでケガなどしないよう、ぜひとも注意したい。
明るい疎林や雪原が入り交じる中を抜け、次第に放牧小屋や貸しシャレーなどの建物が見え始めれば、ウェンゲンの村の入り口。集落の中に入ったら、あとは任意の道を通って、スキーヤーで賑わう村の中心部へ出よう。なお、村の突端にある可愛らしい教会は、ラウターブルンネンの谷を見下ろす格好の展望台になる。時間があったらぜひ訪れ、冬のベルナーオーバーラントの絶景を最後まで満喫しよう。
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