筆者:まず最初に聞きたかったんですが、なんでこんなに花を飾るんですか? |
Cさん:それはもちろん、素敵だからよ!
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筆者:でも、これだけ家があれば、花なんて興味ないような人もいると思うんですけど、なんでこんなにきれいに揃うんでしょう。 |
Cさん:そうね、たしかに義務でやっている面もありますね。家や町を美しくするために花を作るのは、食事の支度や洗濯なんかと同じ、家事のひとつになっているんです。スイスでは花の手入れは学校の家庭科の授業で習います。昔は女の子だけだったけど、今は男の子も習うわよ。 |
筆者:でも、面倒くさがる人もいるんじゃないですか? |
Cさん:そこから先が日本とスイスの違いが出てくるところかもしれないわね。こっちでは、皆がきれいに窓辺を飾っている中で、1軒だけそうしない家があったら、絶対に近所の人からすごい勢いで苦情が来ます。通り掛かりの全然知らないオジイサンなんかがわざわざ注意しに来たりするようなこともあるわよ!とにかく日本人と違って、こっちの人は気になる事があると見て見ぬフリができないんです。 |
筆者:それじゃ頑張らないわけにはいきませんね……では、今度は花をきれいに咲かせる方法についてお聞きします。 |
Cさん:はい、どうぞ。 |
筆者:以前、スイスを紹介したテレビ番組で「スイスの花は、飲み残しのビールを毎日やっているからきれいに咲く」と言っていましたが、本当ですか? |
Cさん:う〜ん、確か私もそんな話をきいたことがあるけど、あまり関係ないと思うわね。だいたい日本でそれをやったら虫がたくさん来ますよ!ほかにコーヒー殻をまいたりする人もいるけれど、まあオマジナイみたいなものね。 |
筆者:日本とスイスでは土や水質が違うというのも、日本で窓辺の花がきれいに咲かない原因だと思うのですが、どうでしょうか? |
Cさん:ああ、それは間違いないわね。それに日本は蒸し暑くって、どうしても風通しの悪い根元なんかが腐りやすいみたい。私が日本にいたころ、スイスと同じようにやってもなかなか上手くいかなくて困ったわ。下のほうの葉っぱがすぐに黄色く痛んで、だんだんハゲになっちゃうのよね。でも、そのうちにいい肥料などわかって来て、うまく行くようになったわね。 |
筆者:ズバリ言って、クリスティーヌさんなりのきれいに花を咲かせる秘訣を教えて下さい。 |
Cさん:花の苗を植えて、大きく育ててきれいな花が咲き始めるまでの、最初の段階というのは意外に簡単なんですよ。問題は花が咲き始めてから、いかにきれいな状態で株を保ち続けるかということね。私の義母(日本人)もそうなんだけど、日本の人はこれがダメなのよ。春に植えて、梅雨明けくらいまでは立派に育てられるんだけど、そこからの手入れがいけません。 |
筆者:いよいよ肝心なところですね。 |
Cさん:まず、ゼラニウムにしろペチュニアにしろ、その他の花も、咲き終わってしぼんだ花はすぐに摘み取って捨てること。黄色く枯れてきた葉っぱもね。それをひとつひとつ毎日毎日するのよ。「毎日」というのが肝心よ。それだけで全然違います。しぼんだ花が干からびてくっついているのはとても見苦しいし、種ができるので、栄養が次の花に行かなくなるの。 |
筆者:ゼラニウムは小さい花が沢山つきますけど、あれもひとつひとつ摘むんですか? |
Cさん:そうよ。それで一房の最後の花が終わった時点で、根元から茎を折って捨てるの。 |
筆者:それってかなり大変では…… |
Cさん:大変よ。だから家庭になにか起こったりすると、たちまち花の手入れが悪くなって、近所にも一目瞭然というわけ。ここ(ベルン)は都会だからそれほどでもないけど、小さな町だとたちまち噂になって、ちょっとイヤね。
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