昨日の日曜版で「日陰のグルメ・いやしい系 フグのごはん」を読みました。実はあれ、故アンディ・フグ氏のオリジナルではなく、御飯に載せるフルーツとつなぎ(?)の乳製品といい、かき混ぜる手法といい、彼の故郷スイスでは割と一般的な食べ方です。
私は時々スイスに行くのですが、ある日のこと、田舎の食堂でゴハンを食べていたら、渋い校長先生風の老紳士が店に入ってきました。常連さんらしく、窓際のテーブルに座ると、店のねえさんがすぐに新聞(日本の「ゲンダイ」系のやつ※1)を持って来て渡します。老紳士が「いつもの…」みたいなことをつぶやくと、ねえさんはカウンターの奥へ消えました。彼の読んでいる新聞はともかく、景色としてはなかなか良いものでした。
しばらくして、ねえさんの持ってきた皿を見た私はたまげました。
皿の上にはリング状に盛られた御飯。リング状の中心の窪みにたっぷりと注がれてあったのは、まぎれもないリンゴのピューレとヨーグルトです。老紳士はその上にお砂糖を少々ふりかけてから、スプーンで一心不乱にかき混ぜてお召し上がりになりました。
私は後日、その驚きを別のスイス人に伝えたところ、彼は「よくある食べ方」と言い、ややトーンダウンして「子供がよく食べるね」と付け加えました。恥ずかしい、というものでもないけれど、それほど立派なものではないらしい。ネコメシです。
彼によれば、ヨーグルトと一緒に生クリーム(スイスの家庭にはいつも常備されている、泡立てる前の甘くないやつ)を少し加えると豪華ヴァージョンになるそうです。はあ…
ついでですが、スイスの人たちは想像以上にお米を良く食べます。でもその食べ方というのが、これまた「フグのごはん」的。
肉料理などの付け合わせに盛られた御飯を、彼らはクリーム味、タマネギブラウン炒めバター味、トマト味などなど、その時々の料理のソースと合わせ、ナイフとフォークの先でにっちゃにっちゃとしつこくかき混ぜて食べます。そのため、彼らの食事中の皿の上はしばしば、一時的にかなり見栄えの悪い状態に陥ることがあります。
在スイス30年の日本人の知りあいは、その状態を「親子丼みたいよね」と言いますが、私はむしろ、日本アルプスにおける登山家の伝統食・伝説のクライマー故長谷川恒男氏命名の「ネコゲロ※2」を思いだします。
|