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谷奥の郵便バス
 御存知のように、スイスの郵便バスの本業は郵便物の集配である。田舎でこれに乗っていると、集落ごとにある郵便局に停車するたびに、運転手と郵便局員が大きな郵便袋を受け渡す姿を見られる。

 さて、郵便バスの仕事は山奥に行けば行くほど増え、郵便物の集配のほか、新聞配達と販売(スイスではもともと新聞の宅配は郵便の仕事。おかげでスイスの新聞宅配率は日本並みに高い)、農産物や牛乳の出荷なども加わってくる。運転手が集落に着くたびに、1人で忙しくあれこれ働いたり配ったりしている姿は、見ていてとても清々しい。

 ところで、真面目一徹で有名なスイスの郵便バスの運転手も、山奥(特にイタリア語圏)に行くと大分状況が変わってくる。

 まず、服装はなんとなくユルくなり、襟元あたりから胸毛が覗く。車内に大音量で流れるのは「ロジ〜ナ〜、ベッラ〜〜〜」みたいな演歌。運転席と乗客スペースの間には「運転手に話しかけないで下さい」と3カ国語で大書したパネルが下がっているのだが(このパネル、他所では「運転中は立ち歩かないで下さい」が主流)、乗客が2〜3人だと「前においでよ」と声をかけ、よもやま話に花が咲く。ガードレールのない峠道をぶっ飛ばしながら、ベラベラしゃべりまくる運ちゃんを見ていると、本気で恐ろしくなってくる。

 一度なぞ、あらぬ所で停車したと思ったら、自宅(?)の中に入っていってお弁当バスケットらしきものをピックアップ、その中から皆にプルーンの実を分けてくれた運転手もいた。

 ところで、郵便バスと言うからには、あの黄色いバスはすべてスイスポストが所有・運行と思っていたら、民間によって運営されている部分もあるのだそうだ。例えばシャムス谷の郵便バス(ローカル線)を運行しているのは、アンデールの旅行会社。そこ所有のバスも、郵便物をちゃんと取り扱っている。

 民間による運行は委託なのか、権利を買うのか??一体どういうシステムになっているのか知ってらっしゃる方、教えて下さい・・・

イタリア語圏の運転手さんはとにかくよくしゃべる、しゃべる。このお兄さんもお茶目だった。ブレガリア谷ソーリオにて(mk)

クールのバスターミナルで売っていた、郵便バスポストカード。「コレクターに大人気!」だって。封筒のデザインは結構ブキミ
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