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びっくりマナー
 旅行ガイドブックの総合情報のページには、たいてい「海外での(この場合スイスでの)基本のマナー」のコーナーが設けてある。スープを食べるときに音をたてるな、レディーファーストを守れとかいうアレだ。

 だが、筆者の経験や知り合いのスイス在住日本人、あるいはスイス人たちによれば、もっと日常的なおかつ重要なマナーが沢山ある。「郷に入らば郷に従え」とは言うが、中には日本人の常識/美意識とは多少かけ離れたものもあり、そんなのも含めていくつか紹介してみよう。

もくじ
・鼻水の掟 ・列車の窓
・おトウさん気をつけて ・窓口の掟
・おネエさん気をつけて ・ニオイの世界
・歩行者絶対優先 ・行列の掟
・テーブルの塩こしょう ・社交辞令にご用心 NEW
生命や国家・国民観に関わる(?)厳守すべきマナー
……だから何だってのよ?なマナー
おスイス

鼻水の掟 

 冒頭からばっちい話で恐縮だが、日本人は人前でハナをかむのを遠慮して、鼻水が垂れそうになるとツンツンすすり上げる人が多い。

 しかしあいにくこれはスイスでは最大最悪のマナー違反になるそうだ。スイスに限らず欧州の人は皆、あの音を聞くと生理的嫌悪感を感じると言う。スープをすする音以上にイヤな顔をされるのは絶対間違いない。

 一方、日本人にとってたまげるのは、スイスでは人が食卓などでもまったく構わず、大きな音をたててハナをかむということ。相席の山小屋食堂などで、隣に座ったオッサンにこれをやられると正直言ってゾッとするが、実はこれはスイスではマナーにかなっているという……はあ。皆さん、スイスでは公共の場でも遠慮せずに正々堂々とハナをかんで、常にスッキリとした鼻でいよう。

 余談だが、鼻の大きさに比例してか、スイスの鼻紙はとても面積が広く、どっしりと何枚重ねにもなっていて使いでがある。あちらの人はハンカチでハナをかむ人も多いので、たぶんハンカチを意識したデザインなのだろう。
(それにしてもハナかんだハンカチ洗濯するのイヤじゃないのかなあ……)

「ヨーロッパで感じの悪い対応を受けた」と言う日本人旅行者の何割かは、この鼻すすりが原因だと断言できる。絶対に気をつけよう

スイスには杉花粉症はない、と思ったら、6月後半から8月いっぱいにかけて、なんと牧草花粉症(ホイシュヌプフェン Heuschnupfen)というのがある!この写真の中で白い花の向こうにそよぐイネ科の牧草、これらの花粉が原因だそうだ。日本で花粉症もちの人は要注意。筆者もやられた……


おトウさん気をつけて 

 レストランで食事を終えると、頃合いを見計らってウエイター(ウエイトレス)が「いかがでしたか?」と尋ねに来るだろう。

 そんなとき我がニッポンの愛すべきおトウさんが、にっこり笑いながらお腹をポンポンとたたく真似をして、満足の意志を示しているのを見かける。本当に幸福そうだ。たとえ言葉が通じなくても、スタッフへの感謝の心が伝わって来る、と思ったら……

 それが日本だったら、ユーモラスで親愛感のある「ごちそうさま」とみなされるかもしれないが、スイスでそれは、非常〜〜〜〜〜に下品な行為なんだそうだ。まあ外国人だから大目に見てもらえるとはいえ、慎んだほうが無難とか……もう遅かった??

オトコのデザート、シャーベットのシュナップス(焼酎)かけ。
写真はプラムのシャーベットで、左の小さなグラスに入ったプラムのシュナップスを上からぶちかけて食す。ベルンのとあるレストランの老ウエイター氏おすすめ。このほか洋梨のシャーベットにウィリアム(洋梨焼酎)の組み合わせもうまい。


おネエさん気をつけて 

 日本人、特に女性や年配の人は人前で大口をあけるのを恥ずかしがり、なんとなく口元を隠しながら物を食べることがある。また、街頭でアイスクリームなどを買ったときに、目立たないように壁を向いて食べる人が入るが、これは見ていてあまりいい感じがしないそうだ。よく、日本人は他人と視線を合わせようとしないので、なんだかコソコソ悪いことをしているみたいだと言うが、これも同じように見えるらしい。

 とにかくどこに出されても(もちろん何か食べているような時でも)女優・俳優にでもなったつもりで、自分の美しさを見せびらかすようなつもりで振る舞うのが正解なのだとか。

 そういえば、あちらの人は自分の所作を美しく見せるために、しばしば鏡の前などで熱心に研究するそうだ。映画なんかでもそういうシーンを見たことがあるだろう。また、立つ・歩く・椅子に座るなど、生活の基本動作を美しくするトレーニング教室も繁盛している。これは日本でやったら結構ウケるんでは?

追記:
街頭でコソコソ食べるなとは言っても、歩きながら食べることは、さすがにスイスでもマナー違反とされている。全然守られているようには見えないが……
(スイス人にそう言ったら「歩きながら食べているのはみんなアメリカ人連中だっ!」と反論されたことがある)

街頭のドネルケバブ屋さんに人が群がってると思ったら、肉屋さんのデモンストレーション。写真のドネルはなんとブタ肉で出来ていて、あれれ??
クールにて


歩行者絶対優先 

 スイスと日本の交通ルールで大きな違いを実感するのが、自動車と歩行者の関係。「歩行者優先」とは言いながらも弱肉強食の法則が支配する日本の交通事情とは違い、スイスやドイツでは歩行者の優先権は絶対的だ。

 たとえば、横断歩道ではない普通の路上でも、歩行者が道路を横断するそぶりを見せたら、自動車は停止して歩行者に道を譲らなければならない。具体的には人が歩道、あるいは歩行者と車両のレーンを分ける白線から1歩でも踏み出したら自動車はかならず停止する。

そのようなわけで……

あなたが運転者なら
 先日も在スイスの友人が「日本からやって来た人の車に案内のため同乗したら、歩行者に譲る習慣がないものだから、危うく人をはねそうになった、ゾッとした」と言っていた。

 旅行先で事故を起こすなどという目に遭いたくなかったら、とにかく上記のルールを守ること。特に信号のない横断歩道が要注意。車は絶対止まるものという感覚が定着しているので、ヤンキ〜車でもない普通の車が歩行者を無視して走り抜けるなんて、誰も夢にも思わないのだ。

 また、先行する車が急停車しても追突しないよう、常に周囲の歩行者の動向に注意しよう。

あなたが歩行者なら
 
向こうから来る自動車があなたを見つけて速度を落としたら、さっさと道路を渡ってしまうこと(たまには歩行者を無視する車もあるので注意)。タイミングがよくわからない場合は手で合図して1歩踏み出し、相手にはっきり認識してもらうといい。あなたが躊躇してモタモタしていると、自動車の方も困ってしまう。なお、いくら歩行者優先とは言ってもあまり非常識な歩き方はしないこと。信号無視はもちろん処罰される。

 また、歩道や横断歩道に自転車専用レーンが設けてあったら、中には絶対入らないこと。日本のように「なんとなく」という分け方ではなく、地元の人は厳密に区別して歩いているので、自転車もそういう前提でかなりスピードを出しており、大変危険だ。

レンタサイクルは?
 自転車のルールがあいまいな日本と違い、二輪車両としての規則が厳格に適用される。歩道の走行は指定がある場合以外は絶対ご法度(通常は車両の規則で車道を走る)、一方通行も適用されるなど、違う文化圏から来た人間にはかなりややこしい。はっきり言って普通の人がママチャリ的に都市部で自転車を借りることはおすすめしない。

まとめ
 ここまで書いておいてこんな事を言うのもナンだが、現実問題として、本人に責任があろうがなかろうが、事故の当事者になったときに海外からの旅行者という立場は非常に不利だ。また、責任配分の考え方も日本とかなり違うそうで、その辺をよく理解して交渉事を進める能力が必要になってくる。とにもかくにも、交通事故には遭わないように細心の注意を払おう。

チケット制の公共駐車場。ちょろっと観光して歩くような田舎の町なんかだと、残り時間にまだ余裕のあるチケットを後から来た車に回してあげることも。もちろん監視の人がいないときに……
アールベルクにて

車道に設けられた自転車レーン。ベルン駅前にて。
ベルン旧市街の目抜き通りは、日中、クルマと市電・バスに歩行者が入り乱れ、かなり無法地帯的な光景を呈する。スイスにしては珍しい。年輩の人によれば昔からそうだったと言うから、気質的なものか?

列車の窓 

 列車でスイスを旅していると、素晴らしい景色に感動し、思わず列車の窓を開けて外の空気を浴びたくなる……が!なぜかこれがスイスでは嫌われる。

 真夏の午後、西日で室内の温度がどんどん上昇して冷房なんか全く効かないような状況でも、スイス人は絶対に走行中の列車の窓を開けたがらない。開ければ即座に「すいませんけど、閉めて」と言われるのがオチだ。室内を風がピューピュー吹き抜けるのがなんかとてもイヤ、というのがスイス人の感覚らしい。都市近郊の生活路線のようなところでは仕方がないかという感じだが、絶景の山岳路線でも窓を開けられないというのは、こと写真好きの人なんかにはかなりキツいだろう。

 以前読んだ、イギリス人の書いたスイスに関するエッセイの中にも、列車で窓を開けられないことに対する不満があった。そこで、その本の中で筆者が提案していたのが:
「新鮮な空気を楽しみたいなら、日本人と一緒に座ること」

 う〜ん、イギリス人と日本人は趣味が似ているらしい。
ちなみにゴッタルド線なんかでよく見かけるドイツ人の鉄道オタクもよく窓を開けたがるが、ビデオカメラを回しながら懸命に自分でアナウンスを吹き込んでいる彼らの側に寄るのはすごくコワい。

スイス旅の便利帳

スポット的な「名所」では、さすがにこんな状態になる。写真のこれはアメリカ人かなんかの団体ツアーか?
レーティシュ鉄道ベルニナ線、ティラーノ近くの有名なグルグル巻き石橋にて


窓口の掟 

 田舎町の駅や郵便局の窓口に行くと、たった1人しかいない係員が、特別用もなさそうな地元のオバチャンなんかと一緒に、長々と世間話をしているのをよく見かける。客が来たのがわかっているんだろうに、一向に終わらせる気配がない……

 もしもあなたが何か急ぎの用があるのだったら、そういうときは遠慮なく声をかけよう。言葉に自信がなくても、「エクスキューズミー」とでも言いながら、いかにも困ったような顔をして、時計を示すようなゼスチャーをすれば、「やーやー、どうぞどうぞ」ということになる。だが、あなたがはっきり意思表示しなければ、係の人だって「まあそんなもんだろ」程度にしか受け止めず、世間話は延々終わらない。かくしてあなたは電車に乗り遅れたり、郵便を出しそびれたりする。

 反対にあなたが長引きそうな用事を抱えている場合、後ろに待っている人がいたら、その人に「私は時間がかかるので、お先にどうぞ」と一旦譲るのがマナー。譲った相手があなた同様時間がかかる用事を抱えている場合もあるが、そんなときはたいてい「いえいえあなたがお先に」と譲りかえしてくれる。

おまけ:
特に日本の男性、
一声かければすむ局面でも、黙ってイライラしている人が多いのはどーして?

これは10年以上前の写真、スイスではなくドイツ・マンハイムにて。
DBの
車掌さん、筆者の「この電車は○○に行きますか?」という定番の質問に答えた後、突然自分から話題を切り替え、当時運行が始まったばかりの「成田エクスプレス」のことについてあれこれ語り始めた(すごく詳しかった!)おしゃべりが好きなんだな。


ニオイの世界 

 あるとき知り合いのスイス人にバーベキューに招かれた。そんな時は各自必ず何か持ち寄るのが鉄則なので、筆者は話のタネにでも……と思い、秘蔵の「いかくん」を持って、意気揚々会場に乗り込んだ。

−−−が、その「いかくん」がその場にパニックを起こしてしまったのである。海産物に慣れないスイス人にとって、あの独特の香りは強烈な異臭だったのだ。人によっては目尻に涙が浮かんでいたくらいだから、相当イヤなニオイだったのだろう。
(日本人にとっての「はじめてのブルーチーズ」以上のショックと見た)

 食のグローバル化で、最近はスイスでも海産物を好む人が増えてきたが、日頃接する機会が多い生の魚介類はまだしも、全く未知の世界とも言える海産加工物の臭いはおぞましい以外の何物でもないらしい。スイスやドイツの一部地域で日本人が住居を探そうとすると、日本人は焼き魚をするからダメ、と入居を断られることもあるが、スイス在住が長い友人の話では、特に干物を焼くときの臭いが問題になるそうだ(周囲から苦情が来るほか、臭いがしみつくと次の借り手がつかなくなる)

 ……それにしても、あんなに臭いチーズや干し肉はまったく平気な人々なのだから、やっぱりニオイの世界というのは生まれてからの慣れが大きくモノを言うらしい。

 さてさて、よく氷河特急などで日本人の団体さんが「いかくん」片手にワイワイやっている所を見かけるが、時折周囲を見回して、隅っこで半泣きになっている人がいないかどうか確かめた方がいいかもしれない。他愛のないこととはいえ、ニオイによる嫌悪感というのは後々まで尾を引くものだ。

追記:
たっぷり香水をまぶしてもの凄い匂い(臭い?)をさせている人!あれはヨーロッパでもやっぱり嫌われ、田舎モンなどと陰口をたたかれる。理想の香水のつけ方は、「じっとしていると何も匂わず、動くとかすかに香り、立ち去った後にヴェールのように尾を引く」だそうだ。難しい……

「ハイジ」にもしばしば出て来るスイス名物のひとつ、干し肉!
肉(多くは牛肉)を大量のハーブ、塩で長期間漬け込んだ後、乾燥して作る。要するに生ハムだが、スイスのものは独特のツ〜ンとしたニオイが強烈で、慣れないとなかなか食べにくいかも(……が、慣れるとうまい)


行列の掟 

 日本国内で刊行されている、とあるガイドブックのスイス版を眺めていたら、「スイス人はどんな時も行儀良く一列に行列を作って並ぶので、あなたも気をつけて」というようなことが書いてあった。……が、はっきり言ってこれはウソだ。うん。

 実際にスイス人がきれいな行列を作って並ぶのは、銀行・役所系窓口とトイレくらい。地域によって多少違いはあるが、大体において日本よりもアナーキーで弱肉強食の風が横行しており、遠慮第一で仕込まれてきた昔気質の日本人には、かなり「やな感じ〜」かもしれない。秩序を愛するということになっているスイス人なのに、これだけが本当に不思議だ。

 たとえば、混雑したデリカテッセンのカウンターでスイス人の行動を観察してみよう。店員さんに応対してもらっている人の後ろでは常に3人くらいが横に広がり、「次は私よっ!」ということを肩のあたりで激しく主張しながら立っているのが見える。そして、その3人の後ろにはそれぞれ行列らしきものが曖昧に3つ伸び、末端の方では様子見の人たちがウロチョロしている(どの行列が捌けるのが早いかは前の方に並んでいる人の才覚にかかっているので、それを見計らうのだ)。

 もしくは行列なんてものを最初から作らず、カウンターの前に群衆がわあわあ群がっているか。店員さんもまた、目の前に戦列に加われずオタオタしている人がいても無視。「さあっ、次は誰!?」と声を張り上げる。

 さて、そんなわけで実践編。さあ、いよいよあなたが最前列近くまで押しだされてきた。前の人が終わった。
「すみませ〜ん」
あくまでも体裁よく優しい口調で、しかし真っ先にきっぱりと言い切った者の勝ちである。店員さんとバッチリ視線を合わせるのをお忘れなく。

おまけ:
隣国ドイツはスイスとは全く違い、どんな場合でもきっちり行列を作る。それに気づかず、いきなりカウンターの中に声をかけて注意されている人がいたら、それはスイス人だそうな。

スイスのパン屋は日本のようなセルフサービス式ではなく、カウンターの内側に陳列された商品を「1kgの白パンをひとつ、ひまわりパンを5つ」……という調子で店員さんに指示して揃えてもらう。そんなわけで時間がかかり、人気のあるパン屋では、朝や買い物のピーク時にはすごい人だかりになる。
最近になって都市部の大きなパン屋やデリでは、テープで客を仕切って並ばせる店も見られるようになった。

筆者の知人K氏の話。まだスイス滞在歴の浅い頃、カウンター前の肉弾戦で全く手が出せずに呆然としていたところ、店員さんから
「あなたね、いつまでそうしていても買い物なんかできないの!」
と叱られてしまったそうだ。怖いよ〜


テーブルの塩コショウ 

 スイスのレストランでは、各テーブルにたいてい塩コショウ、時には酢やオリーブオイルが備えてある。これはもちろん自由に使っていい。チーズの料理なんて、コショウやナツメグを自分の好みに合わせてバンバン振りかける。

 さて、例えばあなたがコショウを使いたいとしよう。そのコショウがちょっと遠い所、もしかしたら隣のテーブルにあり、その前に知らない人が座っていたら、あなたはどうするだろうか?

 たいていの日本人は、「すみませーん」と言いながら、頑張って自分でコショウに手を伸ばすだろう。他人の手を煩らわせてはいけない、人に迷惑をかけてはいけない、と教え込まれて来た日本人は、自分で取れるものは自分で取るのが常識である。

 ところが、実はこれがスイスではマナー違反になる。他人の目の前、あるいは他人の食卓にニュッと手を伸ばすなんて、なんて失礼な!というわけ。 

 こういう時は何でも自分でやろうとせず、素直に
「恐れ入りますが、そのコショウを取って下さいますか?」
と言葉か身振りでお願いしよう。

イタリア料理店なんかでは、サラダを卓上の塩コショウ、それに酢とオリーブオイルを使って自分で調味する所が多い。一番最初にオリーブオイルをふりかけ、それから他の調味料を使うのが、おいしい味付けのコツ!
(写真はMK嬢提供)


社交辞令にご用心(特に女性対女性)

 日本人の社交辞令の定番として「今度ぜひ家に遊びにいらして下さい」というのあるが、ヨーロッパはじめ多くの地域の感覚では、これは社交辞令ではなく、まったく言葉通りに受け止められる。これをお読みの皆さんも、恐らくそのくらい事はご存知ではないかと思う。その気のない時は「日本に来たらぜひ来てね」なんて言ってはいけない。

 ところが!である。

 向こうで知りあった人に、軽々しく「遊びに来てね」なんて言わない日本人でも、逆に向こうから「ぜひ我が家に来てね」と言われると、無意識のうちに「はい」と言ってしまうのである。実際にはお伺いする気なぞ毛頭ない時も、習慣の力でついうっかりそう答えてしまう。なんせ私たちは、NOと言えない日本人。よほど気をつけないと、肯定も否定も全部「はい」になってしまうのだ。

 一方、向こうの人は違う常識で動いている。来て欲しくもない人に「遊びに来てね」なんて言わないし、「はい」と言われたからには、本当に来るだろうと思うのである。かくして、この日本人を誘った人は数日間の予定を空け、いそいそと手作りのお菓子なんぞ焼いて、かかって来ることのない電話を待ち続ける……。

 この「遊びに来てね」に限ったことではないが、日本的社交辞令で何にでも「はい」と言ってしまわないよう気をつけよう。実行できそうにない事、実行する気がない事はきちんと断るべき。ただし、相手を傷つけないような理由をちゃんと添えなければならない。

 日本だと、お断りの理由をわざわざ述べるのはどちらかと言うと悪印象を与えるが、これまたスイスでは逆。しかも、あちらの人を観察していると、この断り方が非常に上手でそつがない。この辺にも日欧の言語文化の違いを実感する。

手土産の定番はやっぱり花とお菓子だが、贈り物のマナーもちょっと違う。

・花を贈る場合、招待主宅にお邪魔する前に、花をくるんである包装紙を取りのけ、むき出しにして渡す。ちょっとびっくり。
※最近時々見るようになった、レースやセロハンなどを使ったかわいい包装の場合はどうすればいいんだろう?どなたか教えて下さい

・白ゆり、菊、そして赤いばらは避ける。ゆりと菊はご想像通り葬祭のイメージ、そして赤いばらは恋人専用の贈り物なのだ☆ 菊は色やアレンジメントによっては大丈夫。

・日本では、招かれた家の子供にお土産を持っていけば、イコールその家族全体に贈り物をしたとみなされるが、あちらはそうではない。招いてくれた本人へのお土産をちゃんと用意しよう。

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